2014年5月30日金曜日

葉緑体で悪戦苦闘

 今週は、ヘテロシグマの葉緑体の分離に明け暮れました。
 細胞内小器官である葉緑体を取ってくるには、細胞を適切な溶液中で細胞膜だけをこわすような穏やかな条件で破砕し、中の葉緑体を密度勾配遠心を使ってとってくる、という手順を踏みます。顕微鏡で見たら、見かけは丸ごとの葉緑体でも、破損していると密度が小さくなる。密度勾配遠心で、沈んでくる葉緑体だけが無傷の葉緑体なのだそうです。

 とくに生化学的な実験をするために大量に必要な場合、葉緑体の精製元としては、ほうれん草がよく使われていました。他にも、モデル植物のナズナとか、モデル藻類のクラミドモナスなどから、葉緑体を壊さずにとってくる方法が確立されています。
 使うバッファーはほとんど同じ。ということは、葉緑体としての性質は、種が違っていても似通っているわけで。
 それでは、ヘテロシグマからだって同じ方法でとってこれるでしょう。

 と、おもったのですが、これが思ったよりも難しかった。
 ほんの少しをきれいに獲ってくることはできていたのですが、今度の実験には、大量に無傷かつ純度が高いものを取ってきたい。
 何が難しいかというと、収量を上げようと、細胞を完全に壊してしまおうとすると、細胞から外に出てきた葉緑体にも傷がつきがち。
 しかし、葉緑体にやさしい条件をと考えて、細胞の破砕条件を甘くすると、細胞が壊れなくて、そもそも葉緑体を取り出せない。

 こういうものって、そもそもの破砕強度を調節するか、あるいは繰り返す回数を増やしてみたり減らしてみたり、微妙かつ再現可能な方法で手加減するしかないんですよね。

 結構苦手なタイプの実験かも・・・・・・(笑)

 とはいえ、ああでもないこうでもないと奮闘した甲斐あり、きれいな葉緑体がたくさん取れてきました!これからしばらくは、大量培養⇒大量精製を繰り返すことになりそうです。

2014年5月23日金曜日

初めての打ち合わせ

 今年の4月から、共同研究を始めました。
 今週は、そのためのパートナーお二人と、打ち合わせ・情報交換。
せっかくだから、顔を合わせて、ということで、地理的には真ん中に位置する、私どもの研究所にお二人にお越しいただいて、これからやらなければならないことを話し合いました。

 うちお一人には、セミナーもしていただいて、とても実りの多い2日間でした。

 セミナーをしていただいた方とは、実は、10年前、私が留学していた研究室を訪ねてくださったのが最初のきっかけで知り合いました。
 ほんの少しのきっかけで、10年後の今、共同研究者になっていただいたわけで、出会い、だの、めぐりあわせ、の貴さがわかります。

 広いようで狭い業界、同僚の一人が、このかたと学生時代から仲の良い友達だったりして、夜、皆でご飯を食べに行ったり、楽しい2日間でした。

 それにしても、さて、数理解析。頼りになる共同研究者と手を組めたからといって、何も考えず、丸投げというわけにはいかないので、今年の初めから少しずつ始めていた解析の勉強も、実地のデータ解析にまでつなげていかなければなりません。
 もちろん、解析に必要なデータを取るのが先決で、そのためには完了しなければならない下準備もいろいろ・・・・。

 研究は3年間の計画ですが、よりよい結果を出すためにも、気を引き締めていかなければ、と今更ながら考えた一週間でした。
なんて言っているうちに、オオムギが実る季節。もうじき、
オオムギグループ総出での収穫に続き、稲作開始の時期
になります。

2014年5月16日金曜日

よそのグループをのぞいてみると・・・・・

 フローサイトメトリーを使わせていただきたくて、岡大の某先生のラボにお邪魔しました。動物細胞を使っていれば、使う人も多いフローサイトメトリーですが、当研究所は、植物に特化しているため、フローサイトメトリーを持っていない・・・・・。
というわけで、アイスボックスにサンプルを詰めて伺いました。

 肝心の実験は、はてな?な結果が出てきたのと、サンプルの調製の仕方に改善の余地あり、というのがわかって一日が終わってしまいましたが、これは、『非モデル生物』を扱うものの宿命。他の生物で確立されたプロトコールを見て、それを応用したので、ヘテロシグマには向かないところがあったのでしょう。改善点いくつかを検討して、再びお邪魔することに。

 という、本来の目的とは別に、他のラボを訪ねていくと、当然ながらラボの設備に目が行きます。
 使いやすそうな、ちょっとした備品の配置を真似したり、『ほっほ~~、こんな機器があるのか』と感心したり、面白いものです。
 お訪ねした先は、着任されて数年たつアクティビティの高いラボですので、機器も新しいものがいろいろ導入されていて、うらやましい限り。
 研究の内容についての夢を持つことはもちろん大切ですが、様々な研究環境を目の前に見ることで、数年後の自分たちの行き着きたいところに思いを致すのも、日々の研究活動に弾みを与えてくれますね。

 それにしても。
 『最初のからっぽから較べたらずいぶん充実したよね』と、現状にちらりと満足を覚えていたのですが、『すでに立ち上げ期を脱して数年、順調に水平飛行中・実績蓄積中』というラボに行くと、まだまだ!!というのがよくわかります。

 お訪ねしたラボには、なんと「全自動ブロッター」などというものががありました!バッファーだの、抗体だの、必要なものをセットしておけば、全自動洗濯乾燥機みたいに、ウエスタンブロッティングのすべてのステップを自動でやってくれる、というものだそうです。
 最適化がむずかしいようですが、確かに、全自動がうまく動けば、再現性の良い実験が可能になりますよね。
 こういうのって、製薬会社などが人件費削減のために導入するようなイメージがあったのですが、むむ、大学でも導入するんだぁ。

 と、びっくり仰天しながら帰ってきて、煽られて実験用アイスバケツを購入。
 ただでもらえる発泡スチロールのクール宅急便用保冷箱をつかっているのですが、実験室用のアイスボックスのほうがはるかに保冷効果が高いのです。
 前からほしかったのでかっちゃった。
 理化学製品のディスカウントのサイトで掘り出し物を見つけて一万円足らずぐらい。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんてささやかなんだろう(笑)。
 

 



2014年5月9日金曜日

気が付けば、5月も半ばです。

 はやいもので、新年度が始まって1か月半が経過しようとしています。
 とはいえ、実験室引っ越しにかなりの時間がとられ、さらにゴールデンウィークも入り、私たちにとっては、やっとのことで新年度始動!の実感が沸いてきたところです。
 
 科研費採択結果は新年度第一日目に通知される、ということは以前にも書きましたが、実際、採択結果がわからないと、そもそもの計画が立てられない仕事もたくさんあります。
 せめて、結果は3月15日ぐらいに通知してくれたらいいのになぁ!

 引っ越しだのなんだののごたごたもあったので、やっとのことで、さて、プロジェクト始動、というところです。
 新しいプロジェクトを始めるとなると、あれもやりたい。これもやらなきゃ。
 それに加えて、以前から持ち越している懸案事項も、ひとつずつ解決していかなければ。
 やりたいことはいろいろあれど、手は限られているので、優先順位を考えてひとつひとつこなしていかなければなりませんね。

 ところで。
 当研究所は、今年10月に、創立100周年を迎えます。というわけで、なにかと『100』があちこちに顔を出すのですが。
 
 まずは、ウェブサイトトップのこれ。人文字、ならぬ、布文字で100。所員みんなで赤い布をもって、空から飛行機で撮影してもらったものです。
 がやがや撮影会、楽しかったです(笑)。

 さらに、圃場を管理されている先生の遊びゴゴロで、レンゲ畑がこんな風に。

ちょっとゆがんだ数字が、かわいいですね。

とはいえ、今は、このレンゲも鋤きこまれて、もうすぐ田植えの季節です。


2014年5月2日金曜日

そして新学期

私たちが所属する資源植物科学研究所は、岡山県倉敷市にありまして、岡山大学の一部です。岡山大学は、倉敷も含めいくつかキャンパスを持っていますが、メインキャンパスは、岡山駅から徒歩20分ほど離れた津島キャンパス。

 つまり、私たちはメインキャンパスからは隔絶されているわけで、大学、というところにつきものの季節感・・・・・4月入学、7月から8月は夏休み、試験期間中の緊張感、冬休み、そして3月がやってくると卒業の季節・・・・・というものが、ほぼまったく感じられない生活を送っています。
 ときどき、用事で本学に行くと、当然ながら学生さんがたくさんいて、『!!そうだ、大学ってこういうところだったよね~~!!』と、今更ながらの驚きを感じてしまうわけです。

各研究グループごとの説明を熱心に聞く新入生のみなさん。
雨降りながらオオムギが植わった圃場見学もメニューに組み
込まれていました。
という、飛び地キャンパスの悲哀を味わっている私たちですが、今週は、農学部との交流会のため、倉敷キャンパスに今年の入学生が大挙して押し寄せてくれました。

 全部で約120名の1回生と教員がやってきてくれると、今更ながら、いつもはずいぶん静かなんだなぁ・・・というのが逆によくわかります。
 この見学は、授業の一環として、レポート提出が課せられているものですが、所員の説明にずいぶん熱心に耳を傾けてくれました。

ところで、写真に写っているのは、旧事務室。前にも書いた、増改築に向けて空けた部屋です。来年の今頃は、この写真に写っている部屋の代わりに、新しい建物で新入生をお迎えすることになるわけですね。