2015年1月30日金曜日

進路いろいろ

 そろそろ、大学院の学生さんたちにとっては就職活動たけなわのシーズンですね。

 私が学生をしていたのは遥か昔、例えば研究室訪問をしてくるOBが就職の重要なつてになっていた時代。今のように、エントリーシートを企業に片っ端から提出して、あちらからのコンタクトを待つ、というようなスタイル自体にもなじみが無いのですが、確かに、これは大変だ…、と間近に見ていて思います。

 エントリーシートも見せてもらいましたが、やはり焦点を絞って書くのが大切そう。会社人事担当がスクリーニングするときに、応募者がどういう働き手になることを望んでいるのか、(それに向けて)応募者は何ができるのかといった絵が描けるような文章が必要なのだろうな、と思います。書き込む内容自体はもちろん大事ですが、書き方自体も大事。・・・いってみれば、例えば研究費の申請書とか、あるいは大学教員職への応募書類とかでも同じですね。

 なんていうことを考えている折に、こんな文書が公開されました。
 生科連からの<重要なお願い>

 いわゆる『ポスドク問題』解決への提言です。20年ほど前からしばらくの間文科省主導で行われた『ポスドク1万人計画』のおかげでポスドクが多くなりすぎ、いわば高学歴・おおむね高能力・(そのわりに)低収入・不安定な身分の研究者が増えすぎたことが重大な社会問題であり、その解決には多面的な対応が必要とされる、という提言がまとめられています。
 私自身、3年前まではいわゆる『高齢ポスドク(しかも最高年齢層)』だったわけで、自分が社会問題の一人だったのね、と今になって自覚して憮然としています。この多くなりすぎたポスドク問題、この文書を読んでいると日本特有の問題のように描かれている気味がありますが、実はそんなことは無くて、国際誌にはこんな記事が

 米国は日本よりもポスドクが遥かに多く、いわばポスドク問題先進国。というわけで、いいアドバイスがあるかな?と最後まで読んだのですが、取り立てて何も無かったのには驚きました。
 もう、20年近く前にカナダの大学を訪ねたときに、たしか50歳ぐらいの『パーマネントポスドク』というポジションについて聞いたことがあります。いわゆるポスドクよりもお給料も少し高く、身分についても普通のポスドクよりも多少は安定している印象があったのですが、今になってみると、どういう雇用の仕組みになっていたのか非常に興味があります。

 話は最初に戻りますが、例えば修士の学生さんは、一斉に企業が求人をかける格好になっていて、就職活動もしやすいといえばしやすい。『何となく』ドクターコースに進んでしまうと、先には上記のポスドク問題があることを考えると、(いまのところはアカデミアに限局されてしまっている)競争の激しい求職戦を予期しながらも敢えて研究にしがみつく、という気持ちが無ければ、修士で就職したほうがよいということになると思います。
 大学は職業訓練校ではない、というのは大事な考え方ですが、それにしても、横目で見ていると学生さんの悩みも理解できます。今はまだ、私たちのグループには学生さんはいないのですが、私もいろいろ勉強させてもらっておこうと思ってしまいます。

 

 

2015年1月23日金曜日

厄落とし!

 年明けから、ついていませんでした。

 いくつかあった中でも一番参ったのは、大学経由である機関に提出したとある研究関連の申請書。大学から速達で送られたにもかかわらず、翌日にもその翌日にもつかず…。結局祭日+土日で3連休で相手の事務がしまっていたこともあり、岡山・東京間の配達に丸6日かかってしまった!というわけで、〆切に間に合わず受理された無かったというのです。大学担当部局からのメールで知りました。

 なに〜〜〜???

 通常ならば翌日にはつくという速達が、大雪だの台風だのがあった訳でもないタイミングで、なぜそこまで遅れたんでしょう??
 謎です。
 開校以来の珍事らしいのですが、よりによって巻き込まれてしまうとは。

 ほかにも、大小取り混ぜてあまり良くないニュースばかりで、どんよりしておりました。

 さなかに、先週書いたメディウム作りがうまく行かず……。
 なぜだ?なぜだ??と調べて分かったのが、どうも原因が二つあることが判明。

 一つには、この実験は、Chrome azurol sulfonateという発色試薬を使うのですが、これを略称CTABという陽イオン系界面活性剤を使って可溶化させるのです。ただ、このCTABは、多くのグラム陽性バクテリアに毒性を示すため、代わりにGood Bufferの一つ、MESをつかうといいよ、という論文が。
 そうか、とおもってやってみたのが、どうも謳い文句のようにうまくは行かない…。

 そのうえ、この発色試薬を加えてつくる培地の組成が、おかしかった。別の論文を見て作ったのですが、リン酸ナトリウムの濃度が10倍間違っているらしいことに今週になって気がつきました。
 どうもこれが、何度作っても青くなるはずの色素が黄色くなってしまった理由のようです。

 ダブル間違い情報に踊らされて、成分が多数ある上にpH調整が必要なややこしい組成の培地を、何度も作っては捨て、作っては捨て…を繰り返すことに。

 やっとお約束通りの青い培地ができたときには、万歳!な気分でした。

 それにしても、論文の情報がこれだけ間違っているのはいただけません。自分が書くときには気をつけなければ。

 このあたりで年始からのツキのなさが収まってくれるといいのだけれど。
 珍しいほどツキの無さを実感していたのですが、さすがにそろそろ流れが変わってほしいものです。

2015年1月16日金曜日

錯体化学(?)

 今年は、ずいぶん暖かい冬ですね。
 去年・一昨年は、朝晩寒さに締め上げられるような気持ちがする日が結構あった気がするのですが、今年はそれほどでもない…。

 とはいえ、案外、これは『気のせい』で、気候はそれほど変わらないけれど、居室が暖かくなったからかも。
 実は、この冬は改築のために居室をもう一グループと共有していて、小さい部屋に総勢7人が『押し込められて』いるのです。去年まではHさんと二人きりだった居室の半分程度の面積に、なんと総勢7人。そりゃ、違いがでてもおかしくない……。

 という話はおいておいて。
 前から気になっていたけれど放っておいた実験の話。
 随伴細菌の、ヘテロシグマ増殖促進作用を見つけたのですが、その理由を探ってみたい。

 藻類とバクテリアの共生関係で分かっていることは、案外限られています。そのうち、やはり藻類が光合成によって作り出す多糖類等を栄養源としてバクテリアが増殖し、その結果バクテリアが生合成して水中に放出するものが藻類の増殖を促進し…というタイプの相互作用は幾つか知られています。
 というわけで、この辺をあたってみたい。
 既に研究されているものもあることだし、できるでしょう。
 と思ったのですが、実はこの実験が案外面倒でした。
 微生物が生合成する物質のうち、培地中の鉄イオンに結合するsidenophoreというものがあります。sidenophoreと三価の鉄イオンが結合すると、光に対して反応性が高くなり、二価に還元されることで藻類が活用しやすくなるのだそうです。で、このsidenophoreというのを測定しようとして、必要な発色物質をいれた培地をつくるのですが、青い培地ができるはずが、きれいなみかん色に。

 う〜〜ん。培地中の鉄が酸性条件で発色物質に結合すると青くなるはずなんだけど・・・。逆に、例えばキレートされて発色物質から鉄が取り去られたら、オレンジ色になるのです。培地中の鉄が、外の物質(ほとんど金属イオン?)に結合して、発色物質と鉄イオンが反応していないのか…。

 とはいえ、論文に書いてる通りにつくっているのに、なぜ青くならないのだ?!ウェブから違うレシピを探してきて試してみても、残念ながら結果は同じ。

 私としてはタイヘン苦手だった無機化学がらみの問題のにおいがします。解決は来週に持ち越しそうです。う〜〜ん。


 

 

 

 

2015年1月9日金曜日

あけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。

 今年の年末年始は、ずいぶんたっぷりとお休みがある♪と思っていましたが、12月中にばたばた入った出張が年末になって効いてきて、結局31日の午前中まで仕事をしていました。

 年末にここまで詰めて仕事をするはめになったのは、考えてみたら博士課程の学生として在籍していた頃以来かもしれません。
 実験科学の研究室にいれば、休みの日も実験室で…というのはよくありますが、しかし、暮れも大晦日まで目を吊り上げて駆け回ったのは久しぶり。
 そんな時期に研究所にいるのは、やはり大学院の学生さんや、外国人留学生で、密かに親近感を抱いてしまいました。

 そういえば、米国に留学した初めての年、11月おわりの『感謝祭』に大学に行ってみたら、人っ子一人いない…。感謝祭は、米国人にとっては、家族と集まってごちそうを食べるというイベントを中心に据えた、大切な日。収穫の季節に実りに感謝するとともに、家族全員が無事に一年を過ごせそうなことをしみじみ喜ぶ日になります。そんな暖かい祝日に、研究室にいるのは米国にやってきて1〜2年の日本人を含む東アジア出身者がほとんど。ああいうときって、ほんと、異国人を実感しますね。

 逆に、米国のお正月は、大晦日に夜中まで大騒ぎして→あけて元旦だけのんびりして→2日からフルに働き始めます。
 あの、三賀日なし、という勤務形態は悲しかった…。もうすこしぬくぬくゆっくりしたいのに、え、今日からフルに仕事??という、まるで眠りから覚めきれずまどろんでいるところを、暖かい毛布をひっぺがされるような、殺生な感じ。
 日本に帰ってきて嬉しかったのは、3が日がフルに休めることでした。今年なんか、4日まで休めたし♪

 などと新年早々休む話ばかりしていますが、内心はかなり張り切っています。
 今年の目標は、早いところこれまでの仕事をまとめあげて発表すること。そして、願わくば新メンバーを獲得すること。

 というわけで、どうぞ今年もよろしくお願いします。

年末年始の休業中に、2階部分の足場が出来上がり、いきなり見通しが悪くな
り、びっくり!今までよりも高い3階建てになることが、やっと実感できる
ようになりました。