2017年10月27日金曜日

フロンティアあれこれ

 今週は、数名のゲストが研究所に見えてセミナーをしてくださいました。

 そのうちのお一人は、私自身が米国からこちらに帰ってくる直前あたりに一度お目にかかったことがある植物ウイルスの研究者(あちらは多分、お忘れとおもわれる)。
 そのころの彼女の研究は、他のウイルス研究者とはちょっと違った発想の研究を、ちょうど始められたあたりでした。
 その時のトークは、正直言って、彼女が求めている研究の方向というか、概念についてはよくわかったものの、研究の成果に当たる部分については、いまひとつ印象が薄い気がしていたのですが、あれから6年。

 今回のセミナーでは、面白そうなネタがざくざく見えてきている、という印象。ネタが多すぎて、手が追いつかないかも、と思えるような感じ。いいですね〜〜。

 そう、6年前は、技術的にもアイディア的にも、彼女の研究はいわば黎明期に当たっていたのだと思います。古典的な植物ウイルス学出身の方なのですが、フィールドサンプリングと次世代シークエンサーを使った網羅的な解析とを組み合わせ、そこから得たものを彼女お得意の分子細胞学的なアプローチに持ち込んで、対象も植物だけでなく、真菌(コウモリの病原体なのだそうです)にまで広がっており。
 アプローチを固定して、しかし対象の生物種についてはこだわらず、トピックもあちこち手を出しては面白いと思う方にずんずん進んでいく、こういうの、すごくアメリカっぽい。

 こういう、面白そうなものにはじゃんじゃん手を出して、周りはちょっとびっくりするけれど、ご本人は確信に満ちている、と言うタイプの研究者が多いのは、特に日本と対象的なアメリカの特徴だった気が。今回のスピーカーのような、一見節操がない?かのように見えて、しかしご本人にはちゃんと道が見えており、時間がかかっても、そのうち上がってくる成果に周りも納得。。。。って、これぞBlue Oceanに漕ぎ出す冒険。
 
 日本は、多分世界の中でもとりわけ職人気質・磨かれた技術を高く評価する国で、そのせいか、学生の頃からずっと同じ生物の同じ現象、人によっては同じタンパク質を扱って・・・という研究者、多い気がします。このアプローチは、特にそれだけ長い時間、携わる価値があると周りも認める研究対象であるほど、Red Oceanで戦い続けることを意味しますね。

 赤青どちらで勝負しても、新しい海をフロンティアとして求めるか、それとも、深く潜って行った先にフロンティアを求めるか、結局はフロンティア探しなわけですが。

 ヘテロシグマ研究も、Blue Oceanを目指したもの。そういえば、4年前に、こんな記事を書いたこともありました。今回のセミナーは、これから6年後に、面白いネタざくざく、につなげるためには?と考えるとてもよいきっかけをいただきました。

2017年10月20日金曜日

10月もあと10日

 早いもので、10月もあと10日。
 つまりは、今年が終わるまであと70日ちょっと?!

 月日が経つのは早いものです。気づくたびに驚いてしまいますね。

 この季節といえば、とりあえず科研費。
 今年は、大幅に申請書のフォーマットが変わりました。申請書のフォーマットが変わるということは、つまり、評価されるポイントも変わるはず。
 改変前後のフォーマットを見比べて、どんな評価を受けることになるのか、考え込んでしまいます。
 こういうときに面白いのが、 Twitter.どうしても、研究者をフォローしてしまうのですが、彼らのこのトピックに関するさえずりは、読んでいて笑えたり、身につまされたり。
 特に、今年から入った「申請計画を考えついた経緯」というのは、どう説明したら良いのか、というのは、研究者たちのツイートを見ていると、みんな迷っているようで。。。
 こうなったら、思いっきりポエムに書いてやる!的奇抜な書き出しの提案とか、純粋に、なんて書いたらいいんだ〜〜!という叫びなどなど、情報収集のつもりで覗いたはずが、ついつい楽しみで読んでしまうという。。。。

 うちの大学の学内締め切りは、11月はじめ。その頃までは、書き終わってもなんども読み直して、書き直しては思い直して元に戻し・・・という日々になってしまいます。
 何かの目標に向かって毎日を過ごす、というのは気持ちの良いもののはずですが、う〜〜ん、審査を受けることを考えると、やっぱりどよっと心重くなりますね。つぶやいたり囀ったりしている同業者の皆さんと、今年もこの季節を無事に通り抜けたいです。。。

 そんな一方で、最近満たしたヘテロシグマ葉緑体及びミトコンドリアゲノム。レファレンスは存在しているわけで、それと照らし合わせながら、マッピングして、アセンブルして、を繰り返して最終的なシークエンスを得るのですが、数ラウンド繰り返してだんだん整合性が取れてくるのは、地味な地味な長い作業ながら、何回やっても快感です。
 研究費の申請書のように、どう頑張っても結果に不確定要素が残るものに取り組んでいると、レファレンスありのアセンブリのように、頑張れば結果につながるとわかっているものを相手にできるのはありがたい。とっても心が落ち着きます♫

2017年10月6日金曜日

同業者たちの苦悩

 毎年のことながら、科研費応募の季節です。
 来年度からの命運がかかる季節、大学教員のうちのかなりが申請書書きにうなされる季節(だと思われる)。

 御多分に洩れず(?)、私自身も、これまでに落としてしまった申請書を取り出して、アイディアを切り貼りしたり、書き直したり、ため息をついたり、頭を抱えたり、、の毎日です。

 そんなある日、岡山大学のメインキャンパスにいる共同研究者のところに、ヘテロシグマを手渡しに行ってまいりました。
 せっかくだからとコーヒーブレイク。
 数年前、岡山大学に、小綺麗なカフェができました。学部の建物からは程よく離れており、さっぱりした内装で、可愛いカップでコーヒーが飲めるこのお店、客の年齢層が、大学にしては高い気が。

 そう、大学教員御用達なわけですね。お手軽Faculty Clubっていう感じ。
 別の大学から訪ねてくださった共同研究者と、直近同僚や学生さんの耳を気にしないでざっくばらんにおしゃべりするのにうってつけなお店なわけです。

 外壁全面ガラス張りのこのお店で、さんさんと秋の日の降る外の景色を眺めながらコーヒーをのみながら、いろいろ情報交換(研究だの、共通の知人だの、自分の所属部局の中の色々だの、雑多な話題なわけですが)。のどかとも言える午後のひとときのはずが、どうしても話題は科研費の申請書だの、研究費の獲得だの現実的かつ喫緊の課題に戻ってくる。。。
 と、あちらの方に座っている二人組が「基盤Cが。。。。基盤Bが。。。。」
 そのおふたりの後ろに席を取っていらした、もう少し静かめ・年配目のお二人が「・・・さんは、〇〇プロジェクトを持っているから××で。。。。」
 ああ、あの方々もこちらのお二人も、科研費or研究費の話をしている。共感とおかしさで、笑いを噛み殺す私たち。

 いやはや、この季節は、研究費獲得しなければ!の危機感が細かい細かい粒子になって空気中を漂っている気がしてしまいます。
 全然わかっていなかったけれど、私が学生だったときの先生方も同じお気持ちだったのでしょうか。。。
 なんとも妙な感慨に浸ってしまいます。

 全国の同業者の皆様、今年もご一緒にこの季節を無事乗り切りましょうね。って、結果を笑顔で受け取れるのはそのうちの25%程度というのが結局一番切ないのですが。。。。。