2014年8月29日金曜日

8月もおわり

 倉敷だけではなくて、全国的にだと思いますが、なんだか、秋の気配が漂っています。
空が高いし、朝風がさっぱりと涼しい感じ。
 暑いの苦手、湿気も、もう結構!とはいえ、竜頭蛇尾な夏の終わりにちょっと物足りない感じもします。

 とはいえ、夏の終わり=夏休みシーズンの終わり、とくると、『さっ、仕事仕事♪』な気分になります。飛び地キャンパスとはいえ、やはり大学というところにいると、夏=休みモード。決して夏の間遊び暮らしていた訳ではないのですが(夏休み=スケジュールの自由が利くわけで、実は出張などはこの時期が多かったりします)、涼風が吹き始めると、ぴりっとするんですね。

 という、『大学』にいるから感じる季節感とは別に、今年の9月の到来はちょっと肩すかし感をもたらしてくれました。
 実は、今年度に入って取り組んでいる仕事のうちの一つに、フィールド調査に関連したものがあります。これは、共同研究者にお願いして、ヘテロシグマが赤潮を形成する過程をモニターして、その生物学的分析をしようというもの。
 サンプリングのプロである彼らにお願いして海水サンプルを採取してもらい、宅急便で送ってもらったサンプルを私たちが処理して、凍結保存。毎週1回ずつのサンプルを受け取っては凍結、受け取っては凍結…。理想としては、ヘテロシグマがほとんどいない海水・増え始めた海水・大発生=ヘテロシグマ赤潮を形成した海水・ヘテロシグマが減少し、赤潮が終息した海水を分析して、ヘテロシグマによる赤潮発生のメカニズムを探ろうというもの。
 私たちは、実験室での研究に明け暮れている訳ですが、赤潮はあくまで環境生態現象。環境から直接得たサンプルから答えを得る、というのは、やはり必要なステップでしょう。
 というわけで、毎週水曜日には、発泡スチロールに保冷した海水サンプルを受け取って、回収→ストックを繰り返しながら、ヘテロシグマ増殖の原因がこれらのサンプル分析から明らかになることを夢見ていたのですが。
 そろそろ9月に成るのに、結局今年はヘテロシグマ赤潮は一度も発生しませんでした!

 共同研究者によると、海洋生態学者の間では、『赤潮は、研究しようと身構えると発生しなくなる』というコトワザがあるのだそうで。
 地元の水産業に従事する人々にとってはとてもよいことだと思うのですが、サンプルを待ち望んでいる身としては、肩すかしな感じ。今年はそろそろあきらめて、来年の夏をまとうか?という気分になってきました。
ううん、残念。といって、いいものかどうか……。

 
 




2014年8月22日金曜日

拡大班会議@神戸

今週は、2021日に神戸で開催された『ゲノム支援拡大班会議』に出席して参りました。
 『ゲノム支援』というのは、正式には『ゲノム科学の総合的推進に向けた大規模ゲノム情報生産・高度情報解析支援』という名称で、文部省が行っている3つの研究支援事業の一つ。
 遺伝子配列の解読は、いわゆる『次世代シーケンス技術』の普及により、驚くほど簡単になってきました。以前であれば、数カ国が参加して、国家予算で計画するレベルの研究費と10年以上の年月をかけて、やっとのことで解読できたものを、今であれば、その機器(一台数千万円から数億しますが)と、その利用に精通している研究者が数人いれば、理論的には数ヶ月以内に予算規模もせいぜい数百万円で解読できてしまう(とてもおおざっぱに云えば、ですが)。
 当然ながら、この技術を取り入れて研究を計画したい研究者はたくさんいます。とはいえ、特に地方大学にいる研究者は、このシーケンスを行う機器を持っていない人がほとんどです。そして、その技術を身につけた研究者も未だ少数。せいぜい数百万円の消耗品・人件費だって、日本の生物学基礎研究の予算規模…一般的といわれる基盤研究(C)で、年に百数十万円程度…を考えたら、大学に在籍する研究者には、なかなか出せない。
 というわけで、文部省の肝煎りで、ゲノム支援の名の下に研究支援拠点が発足、1年間に100課題程度の研究課題を選択し、この次世代シーケンス解析…実際にDNA/RNAからライブラリを作成し、配列を読む解読の段階から、ツールを用いた情報解析まで…その道のプロが支援してくださるという、本当にありがたい研究支援事業が行われている訳です。

 以前、焦って葉緑体を取っていたのは、この支援を受けるためだったのでした。

 と、前置きが長くなりましたが、この研究支援をこれまでに受けた人・これから受ける人たちを集めて、情報交換と交流を図りましょう、というのが、この『拡大班会議』というわけです。これまでに支援を受けた人は、3分間のトークとポスター発表、これから受ける人はポスター発表で、全200課題以上。それぞれの研究者が、共同研究者と一緒に出席することができるので、数百名が一堂に会する機会だったわけです。
 一口に『ゲノム支援』といっても、ゲノム情報を必要とするのは、医学も含む生物学全般。発表内容は、病原性微生物からヒト遺伝多型からほうれん草からアリから……生きとし生けるものすべてを含んでいます、という感じ。
 3分ずつのトークって、短すぎない?と思っていたのですが、かいつまんでいろんなお話を伺えるというのは、とてもよかったです。ここまで発表内容が多岐にわたると、あまり詳しく話していただいても、こちらがついていけませんね。
 結局、20日午後1時から始まって、その日の終了は夜10時過ぎ、21日も朝9時から昼の1時までと、なかなかハードなスケジュール。途中、交流会では、私たちの課題を担当してくださる先生方にご挨拶の後、いろいろなお話を聞かせていただき、とても有意義でした。


 私たちが扱っている材料が珍しすぎることからか、ポスター発表は、それほど多くの方に見に来ていただいた訳でもなかったのですが、その分突っ込んだお話ができて、楽しかったです。こういうときに、自分のたてた研究計画に『それは面白いですね!』というようなコメントを頂けると、とってもうれしいですし、心強いものですね。

2014年8月15日金曜日

お盆休み

今週はお休みさせていただきます。
楽しく安全なお盆休みをお過ごしくださいね。

2014年8月8日金曜日

ドアの向こうは……

 夏休みが近くなって参りましたが、改築は着々と進んでいます。

元居室。エアコンが取り外されて、
天井に穴があいたり…
元実験室。シンクもとりさり部屋
は空っぽ
古い建物を解体する、と聞いて、発破をかけるまでは行かずとも、ガガガッとブルドーザーで体当たり……みたいなことを連想していたのですが、じつは、建物の解体って地味で細かい作業のようです。考えてみれば、建物、といっても、コンクリートも鉄もゴムもプラスチックもガラスも含まれている。これらをいきなりガシャンガシャン!と壊してしまっても、後始末に困るし、危ないですよね。取り外せるものは取り外し、再生できるものは再生し……と、いわば、巨大な廃棄物分別から始めなければならないようです。

床の境界から向こうが、解体される部分。
天井の蛍光灯のユニットが取り去られて、
あいた穴から電線が垂れ下がっています。







 というわけで、まず、部屋の中にあった、シンクやエアコンを外し、片付ける。次に、特に電線関係の切り離し・取り外しに大変時間をかけていました。まず、他のビルとつながっていた電気系統を切り離す。天井板をあけて、その下にある電線を種別に?切り離し取り外し……、だんだんと建物の枠組みが見えてきたところで、ある日取り壊す建物と残る建物の間に青いビニールシートが張られ、次の週の始めには、壁とドアができていました!
 もうあちら側は、別世界になっちゃったのね……。
 私たちが使っている実験室の一つは、この壁のすぐとなり。なんだか変な感じ、です。









 朝早くなど、重機が動いているのが、音ではなくて低周波の振動で感じられたりして、何度も繰り返すようですが、今更ながら改築って大変……。
 来週は、お盆休みが入りますが、それまで暑い中も工事は続きます。


で、壁とドアが出来上がり。なんだか、妙な閉塞
感が……

2014年8月1日金曜日

腕力不足

 突然ですが、唯今、私たちは、いくつかの海洋バクテリアを、生き残り無く完全に破砕したものを実験に使おうとしています。
 溶液中に縣濁した細胞を、皆殺し(失礼)にして、その中に入っている様々な有機物をある実験に供したい。このときに、細胞は全く生き残ってほしくない。
 至極簡単……なハズ。

 ところが、いろいろやってみたのですが、どうも、不死身な(?!)バクテリアで、なかなか死滅してくれません……。

 まず、凍結融解x5回を試してみましたが、結構な数のバクテリアが生き残る。
 それでは、と、超音波破砕機に複数回かけてみたのですが、これも生き残り多数。
 
 バクテリアは、UVで殺菌されるわけで、では、と、無菌操作をするためのクリーンベンチのUV灯直下にシャーレに流し込んで(ふたなしで)おいてやって、UVを至近距離で照射しましたが、15分経っても生き残り多数。……余談ですが、これ、結構ショックですよね。UV殺菌灯にこれほど耐えるものなのですよ、ある種のバクテリアは。みなさん、クリーンベンチを使う際には、手はきれいに洗って、アルコールで消毒してからにしましょう。

 ゆでたら?という意見もあったのですが、加熱で変成するものが多すぎて、意味が無いかも……ということに。

 というわけで、最後の手段、フレンチプレスを使うことにしました。これ、その昔フレンチ博士がある会社と手を組んで発明したのでフレンチプレスと呼ぶのだそうです。

 金属製の小さな容器の中に空気を抜いた状態でサンプルをつめ、高い圧力をかけて、そこから狭い間隙を通して噴出させる(外は1気圧)ことで、圧力差を利用した剪断力で、細胞を壊すというモノ。よく、大腸菌でタンパク質を大量発現して、精製するときの大腸菌の破砕に使います。細胞壁を持っている細胞一般に使う方法ですし、大腸菌につかえるのならば、海洋バクテリアにも使えそう。

 ただ、中の容器の構造上、例えば25ミリリットルのサンプルをつめると、つぶれないサンプルが1.5ミリリットルぐらいは出てしまう。というわけで、5回機械をかければ、なんとかなるでしょう、という心づもりで処理開始。

 ……すごい力仕事になりました……。

 金属性の小さな容器は底もふたもない円筒形で、その円筒にぴったりはまる棒状のものをしたから差し込んで底にして、上からも、やはりはめ込み式のふたをして、棒状の部品に機械が圧力をかける、わけなのですが、組み立てるのにも力がいる上に、圧力をかけて処理した容器からふたと棒状の部品を引っこ抜くのに悪戦苦闘。
 初めて使う機械だから、と、この機械を使ったことがある別グループの同僚にお願いして使い方を教えてもらったのですが、彼の腕力を持ってしても、結構苦労していたものを、こちらは、Hさん+やはり使い方を覚えたいという隣グループのポスドク(女性)+私がかわりばんこに挑戦すれど、うう、こんなに大変だとは。
 しかも、圧力をかけている間の音も、すごい。及び腰でびくびくしながらの実験です。

 午前中いっぱいを使って、やっとのことで1サンプル処理。あと2サンプル処理しなければなりませんが、続けては体力的にとても無理!

 1日おきに1サンプルずつ処理しようということにしました。非力にはつらい実験です(笑。

 それにしても、あれだけ頑張って、5回処理してそれでもバクテリアが生きていたらかなりショックですね。その場合はどうしようか、考えなければならないのですが……。とりあえず、少しだけとってプレートにのばして培養して生き残りをチェックする間、幸運を祈るとしましょう……。

 ところで、これ、1970年代に購入した、骨董品的価値がある機械なのですが、仕組みが簡単なこともあって、今でも消耗部品を入れ替えれば問題なく動いてくれます。素晴らしいのですが、多分、今ではもう少し便利なものが出ているのでは……。研究所に1台あれば十分な設備なので、もう少し使いやすい新しい型式のものが欲しいいぃ………。と、筋肉痛の二の腕をまわしつつ思ってしまいます。