2016年5月25日水曜日

水温む時

 二週間前に書いた、津々浦々からの泥の話。

 新しいことを始める嬉しさに、宝の山、という表現を使ったわけですが、いやはや。
 送っていただいた泥に、海水を加えて照明付きインキュベーターへいれたのが二週間前。人工海水に泥を懸濁して、それを1-mLずつ48-wellプレートに植えてみました。

 x100程度の倍率で顕微鏡で見ると、うむ、泥、というものの結構な割合は、まるでガラスの破片のように見える鉱物だ、ということはよくわかりました。 その後一週間ぐらいまでは、何か動くものはあれど、小さくて何だかわからないものがうようよしてる....。ときどき、動きが素早い動物プランクトンかな?というものがひゅっ!と視界を横切っていく、ぐらい。

 なんにおもしろそうなもの、生えてこないなあ〜〜。

 などと思っていました。

 しかし、一週間と1日経った朝、顕微鏡を覗いてみると、

 おお!

 まず、目についたのは、円板状の珪藻。
 泳ぎまわるプランクトンも。
 そして、小さくてなんだかわからないものがうようよ・・・は、なんだか大きくなってる。
 そして、この実験の目的である、ヘテロシグマらしきものもいる...!wellごとに、生えてきているものの種類・組み合わせが違うのが面白いところです。

 直径1センチ内外の小さなwellの中で、海底の生物たちが目を覚ました、って感じ。

週末中に育ちすぎて死に絶えては悲しいと、一部をとって、植え継いでおきました。

さらに週末を越して、今週月曜日。植え継いだプレートを朝一番で顕微鏡観察すると、48 wellのかなりの割合、それぞれほぼ1種のプランクトンが優占している.....。

 すごいなあ、これ。まさに、赤潮の実験室での再現って感じ!

まあ、使っている人工海水は、ふつーの海水に栄養塩などをたっぷり加えた組成。理想的すぎる環境なので、再現は言い過ぎ、かもしれません。でも、同じ容器で散々混ぜ合わせて懸濁したはずの泥入り海水、しかも、数日前まで、数種類が共存していたはずが、wellごとにこんなに優占するものが違うって...。いますぐ飛びつくわけにはいかないけれど、これは、今後、興味を持って追ってみたいトピックになりそう。
 
 とりあえず、当面の目的に絞ってヘテロシグマ、と思えども、これほど劇的な変化を目にすると、単純に興奮します。泥とってきて、海水加えて、暖かい明るいところに置いてみました、というと、小学校の夏休みの宿題のようですが、やっぱり自分の手でやってみる、自分の目で見てみるって、大切ですね。

 そして、とりあえず必要に迫られて顕微鏡だけ買ったのですが、こうなると、顕微鏡につけるカメラとビデオが欲し〜〜い.....。お買い物欲も刺激されてしまいます。空き時間にネットでいろいろなカメラをサーチしながら、頭の中でやりくり算段中です。
 
 

 

2016年5月20日金曜日

夏を控えて

  新年度も始まって落ち着きを見せるこの季節、何かと忙しくなってきます。
 去年一昨年とお世話になったゲノム支援の公募、ありがたいことに今年もオープンに。くわえて、財団からの研究費公募もあれこれオープン。夏には、特に海外での学会が入ることが多いわけですが、これの予約だの準備だのも始まるし。実験も、なんだか活発に進んでいる気がしますし。夏に向かって、加速してる感じですね。

 加速の一方で、未だにごちょごちょ続けているperl修行。実は、結構いろんなスクリプトを書いて、私なりに(と限定が必要な程度ですが)馴染んできた感じ。
 未だperl使いというには、やられっぱなしですが、しかし、決まりきった単純作業を機械にわたして瞬く間に処理してもらえる方法を学んだのは、大きい気がします。
 これからしばらく、マニュアルで一つ一つこなしたら発狂するぅ!な単純作業x数百回の必要があるのですが、これの処理スクリプトがかけたので、発狂&手根管症候群罹患の危険は去りました。ああ、よかった。

 もっと早くに学べばよかったと思うけど、やはり、こういうものは必要を痛感して、しかも、その旨味を実感しないと敷居が高いですよね。とりあえず、敷居はまたいだので、もうちょっと遠くまで入り込めるようにと教科書を取り寄せてみたり。なんだかんだいって楽しく習得を続けています。

 の一方で、こういうの、ラボ全体で取り入れようと思ったら、つまり、学生さんに習得してもらおうと思ったら、どうするのがいいのでしょうか?とりあえず、はい、勉強して!とハッパをかけ、何か課題を課す、かな。
 あるいは、発狂しそうな単純作業をあえて少しだけ経験してもらい、はい、スクリプトかけるとこんなに楽チン、と、デモするのが一番効果的だったりして。
 とはいえ、同じ学習するにしろ、何も私が右往左往した通りの入り方をする必要はないなず。
 一歩進んだとして、学習して書いた便利なスクリプトは、数人で共有したい。
 
 今のところはスクリプト書いたり使ったりを自分一人でやっているわけですが、チームの人数が増えることは大切な夢の一部。昔から、人と一緒に働くときの鍵は、いかに必要な情報をパッケージ化して間違いなくやり取りができるか、だと信じているので、複数人数とどうやって情報共有するか、のデザインは、いつも頭にあります。
 実験プロトコールの共有については、こうしよう、と言う形がすでに頭の中にあって、試してみたくて仕方がないのですが、スクリプトの共有は、扱うものの厳密性が高い上に、何を考えて書いたかのポリシーがきちんと伝わってこないと、共有の意味ががたんと減りそうで。

 コメントを日本語できちんと書き込む、が一番でしょうか?入力を切り替えるのが面倒で、英語で書いているのですが、英語だとどうしても簡単なメモ程度になってしまいますし、読むときにちょっと敷居が高いかも。

 夏には、Bioinformatics専門の人たちとしっかり話ができる機会があるのですが、そのときに、彼らのグループではどうしているのか、いろいろ情報収集しようと思います。

 
 
 



2016年5月13日金曜日

宝の山

 モデル生物・培養細胞を使う研究をしていると、みんなが使っている株だの系統だのを使って研究をします。既に確立された系統や株の、出処はまず同じなものが、その研究をしているどこのラボにもある。それをみんなが使って研究している。

 私自身も、モデル生物だの培養細胞だのを使う研究分野出身。全く当然のことのように、ヘテロシグマの研究をはじめたときに、お願いして確立された株をよそから頂いて来ました。
 全5株、これをずっと継代したり、無菌化したりして研究を進めてきたわけです。

 でも、考えてみたら、モデル生物だろうが培養細胞だろうが、系統だの株だのって、最初はどこか自然に存在していたものを『とってきた』わけですよね。

 せっかく自然の中での振る舞いに興味を持ってはじめたヘテロシグマの研究。やっぱり、自分で株を拾うところから始めてみようかという気になりました。

 で、株単離。Single cellを拾うわけです。
 ヘテロシグマはプランクトン、自分で泳ぐ生物。というわけで、100倍程度の倍率の顕微鏡下で姿を追いながら、パスツールピペットの先を細くのばしたもので狙いを定め、泳いでいるところをひゅっと吸い込む。プランクトン屋さんは、よく使う方法なのだそうです。

 ぶきっちょには、ムズカしい・・・。とはいえ、私が出張して習ってきたワザを、口伝のみ(見本なし)でHさんに伝えたところ、Hさんはあっという間に上達。
 ぴゅぴゅぴゅっと、いくつも株を拾ってくれるようになりました。

 このワザは、最近共同研究を始めたNさんから伝授していただいたのですが、Nさんが手配してくださって、現在、文字通り日本の津々浦々から、浅海の泥が送られてきています。

 まだ水が冷たい頃に採取された泥の中には、ヘテロシグマのシスト(休眠胞子)が隠れています。これらを、ヘテロシグマ培養に最適な条件でインキュベートして、うまく休眠から目覚めて増殖ステージに入ったヘテロシグマをまずはどんどん株化しよう、というのが当面の計画。

 そもそも、泥からシスト→ヘテロシグマ、という発想が全くなかったので、驚きでした。

 この研究の大元のアイディアを持ち込んだのは私めなのですが、そもそもの目的を達成するためには、いろんな海域のヘテロシグマが欲しい。でも、そんなこと、できるもんでしょうか??と、及び腰でNさんにご相談したところ、あっというまに研究の方向が定まり、サンプルも考えられないぐらい広範囲から集めていただけることになり・・・・。
 共同研究って、スゴイ、ありがたい!を、ここでもまた痛感しました。
 『アイディア』だけじゃ、何もできませんね。ネットワークって、本当に本当に貴重です。

 続々とNさんのところに届く泥からのヘテロシグマ拾い、半分はNさんが担当してくださり、こっちチームはもう半分を担当、ということに。こっちチームは、拾うところはHさんにお願いして、私は培養作業を分担して、しばらくは数をこなす毎日になりそうです。

 海の泥は、何も知らなければ、ヘドロ?と思うような黒い半流動体。50-mlのファルコンチューブに入れて、天地無用のステッカーがベタベタはってある発泡スチロールの箱を受け取った時には、うふふ、宝の山到着!と大事に大事に開封。今日の午後から、ヘテロシグマに目を覚ましてもらうべく、培地に移す作業に入ります。

 


 

 

 

2016年5月6日金曜日

GWですので

 今週はおやすみさせていただきます。
 みなさま、楽しい休暇をお過ごし下さい♪

と終わらせるつもりだったのですが。

  いまだおずおず、の域を出ないPerlに加えて、苦手のRにも手を出してみたり。
 統計学的データ処理に使うのが王道なのでしょうが、現在私が必要なのは、いわばエクセルでよくやるような、文字列情報を含むデータをソートしたり、値を比べたり、といったところ。
 数十種類の遺伝子の配列について、それぞれBLAST検索をして、それをまとめたものを、今度はターゲット遺伝子ごとに並べ直して、geneIDその他を抽出して・・・・。
 Web-basedのBLASTとエクセルで一つ一つマウスを使ってやったら、手根管症候群まっしぐら or just give up なこの操作、PerlとRでコードを書くと一瞬ですんで、まさに目が点に。

 単調な作業をぶつぶつ言いながら繰り返していた今までの人生はなんだったのだろうか・・・。

 こういう、未だ試行錯誤中、勉強中、なことを、いわゆる勤務時間内にするのって、いくらなんでも気がとがめる。GWのおかげで、のびのびと(?)試行錯誤しています。

 ちょっと、いや、大分おくれたスクリプト書き修行満喫、おかげさまで有意義なGWになりました。
 居室が快適になっていたことに感謝です♪