2018年5月25日金曜日

新メンバーに続き

 昨日今日と抜けるような青空が続いています。本日、倉敷は最高気温29度の予想。
 ほとんど夏ではないですか。
 梅雨は、曇り空とぱらぱら雨が続く程度の倉敷のこと、このままなんだかんだと暑い夏に突入するのか・・・と、爽やかな青空を見上げながらも、ちらりと憂鬱がかすめたりします。

 今週は、岡大農学部の学生さんが2日だけ実験をしにやってきました。
 今年から農学部のM先生と始めた共同研究、学部生の学生さんに参加してもらって進めてみようという試みです。
 私たちの研究所では、岡山大学から学部生を正式に指導生として引き受けることはできないのですが、学部と研究所の間での共同研究を介して、部分的にこちらで実験を進めてもらうということになったわけです。4月から加わった新メンバーに加え、もう一人、ヘテロシグマ研究に参入者がふえたわけです。すでに走っている、工学部のS先生との共同研究も加えると、岡大でヘテロシグマ研究に関わっている人は、4名になりました。
 去年までは、1〜2名でしたからね、結構増殖した感あり♬

 学生さんに実験手技を教えたり、は、実はかなり好きだったりします。
 米国でポスドクしていた時、通算で30人ぐらいの学生さんと一緒に実験しましたが、プロトコールづくりにはじまり、説明の仕方も練り、当時は英語での意思疎通を円滑に測るためにも、結構色々と気を使った。。。。わけですが、この手のコミュニケーション、手間をかけ、工夫をすることで色々なことが変わってくる、ちょっとした工夫や努力がとっても報われるのが驚きでした。
 こちら側のちょっとした努力、は、こちらの理解だの説明能力だのをあげてくれる、という意味でも、やっぱり、研究しながら教える機会は欲しいものです。

 今年の初め、「新メンバーが欲しいのならば、数名で働きやすいラボを作ろう!」というわけで、細々とした整頓だの、動線の検討だのをしたわけですが、なんだか目論見が当たった感じ。7年前のラボ開闢以来初めて、22平米という小さい部屋に入った中央実験台のあちらとこちらでそれぞれ別々の実験している人がいる、というのは、超ささやかながら達成感がありました(笑)。今の所は、研究の過程のほんの一部をこちらで、というメンバーなわけですが(4月からの新メンバーMさんも、9月にはチリのラボに移動します)、こうやって少しずつチームを大きくしていく、という手もあるな、などととも思いました。
 
 

2018年5月18日金曜日

あれから6年

 昨日は、こちらに着任して一番最初にいただいた研究費を助成財団、長瀬科学技術振興財団の30周年記念の会に出席してまいりました。いただいた際の、贈呈式に出席した時から、6年経ったんだわ、と、ちと感慨深いです。

 大阪で開催されたのですが、この会で、なんと、ノーベル賞受賞者 大村智博士による講演会が行われるということで、楽しみにしておりました。
 大村先生といえば、微生物より数々の抗生物質を発見し、さらにそれらを改良して、人や動物の感染症治療に多大な貢献をされた功績をたたえてノーベル賞を受賞された方です。
 特に、抗寄生虫薬であるイベルメクチンは、もともとは線虫の成長を抑制する化合物として開発されたものが、昆虫や蜘蛛に対しても効果があるということで、これらが起因している病気の治療・拡散防止に大きく貢献したもの。犬のフィラリア症の治療・予防に始まり、最近では皮膚病の疥癬(ダニが原因なのだそうです)の治療にも使われているそうです。なにより、いわゆるNeglected Tropical Diseaseとして知られてきた、熱帯の風土病であるオンコセルカ病や、リンパ系フィラリア症の抑制・治療、そして、地域の住民全体に投与することで拡散予防が実現し、2020年〜25年には撲滅の見通し、というお話を伺って、『科学ができること』の大きさに改めて感動。抗生物質の開発に始まり、研究成果から上がった収益をより社会に役立てるための病院の設立にまで、大村博士ご自身がご尽力されたというお話を伺い、スケールと行動力に圧倒されました。
 帰ってくる新幹線の中でも、今、こちらを書きながらも、思い返して余韻を噛み締めています。

 私自身が理学部出身だからか、研究というのはまずは面白いのが一番大切(その他のことは、そのあとのこと)という発想が抜けないのですが、大村先生のお話は、まさに科学が世界を変えたストーリー。穏やかな、ユーモアを交えた語り口で、普通のことどもを語るようなリズムで語られた内容は、ちょっとやそっとのドラマでは書ききれないようなお話でした。

 という一方で、この財団からいただいたのは、赤潮の研究を始めて、初めていただいた外部研究資金。なんというか、私にとっての、ある意味の『原点』なのです。この研究費の申請書に目標として記述したことで、いまだに実現していないことが多々あるのは心が痛むことなのですが、原点、にまつわる会で、良いお話を聞かせていただきました。
 スケールは違うものの、実は、私たちが参加しているチリプロジェクトも、世界の片隅でお役に立てるような成果を目指しての仕事。とにかく、まずは目の前の基礎研究をしっかり、という思いがあるのですが、一方で、この講演会で伺ったお話は、このプロジェクトが進むにつれ、思い返すことになると思います。
 
 

 

2018年5月10日木曜日

今週は、お休みさせていただきます。

 早いもので、今週末は、恒例の研究所公開です。
 今年も、研究所腕章をつけて、張り切ってご案内させていただきます!
 ご報告は、来週こちらでさせていただきますね♬

2018年4月27日金曜日

GW!

 気づけば、チリプロでのラボメイトが増えて1ヶ月。
 何と言ってもありがたい、というか、ほとんど驚きなのが、
 『申請書を書いているうちに、研究が進んでいる』こと。
 今までは、一緒に働いてきた方々には、研究そのもの、というよりも、補助業務をお願いしていました。申請書を書いている間に、洗い物だの、株の継代だのを進めてもらっていたわけですが、作業ならぬ『研究』が進んでいるというのは、一味違う感があります。

 忘れっぽいのか順応力があるのか、1ヶ月前には『ぼっちラボ』(←同僚の表現です)だったのが、もう思い出せない気分。朝から晩までおしゃべりとして研究周辺の話ができる、というのは、一気に頭が活性化した気分で、ありがたいものです。

 なんて言っているうちに、一度急激に上がった気温が、ふと冷え込み、季節逆戻りの気分の一週間.....とはいえハッと気づいたら、今週末から大型連休ではありませんか!

 最後の山場にかかっている予算申請書。とにかく連休前半に一度仕上げて、後半は遠ざかって頭をリフレッシュして、連休後に仕上げるつもり。
  去年は、GWと説いてGoing to workと説く、と言われて納得していましたが、今年は、何が何でも(?)お休みをいただきます笑。
 みなさま、良い連休をお過ごしください♬
 
 

2018年4月20日金曜日

真水と塩水

 久しぶりに、切実な話題。研究費の話題です。

 去年から折々にご報告しているチリでの赤潮プロジェクト。これは、いわゆる受託研究費、という分類になる研究費でサポートされています。
 結構細かく使途が決められ、しかも、策定の課程で、Funderから色々とツッコミが入ります。プロジェクトを推進する私たちの希望は案外否定される頻度高し。また、今後の変更にもかなりの審査が必要な様です。

 一方で、文科省からいただく科研費というのは、ルール違反しなければ、かなりの自由度が保証されています。研究の進捗に応じて、ある消耗品・備品・人件費が、もっと必要になったり、はたまた必要が少なくなったり、と言う変化は日常茶飯事。そう言う研究開始時には予見できなかった需要の変化にも柔軟に対応可、なところが素晴らしい。

 チリプロジェクト(今後しばらくは私的に略してチリプロ)、地球のほとんど真裏に行って、赤潮頻発海域に張り付いてその趨勢を生物学的にモニタリングし続けると言う、このフィールドの研究者にとっては夢に近い計画を含んでいます。
 このプロジェクト、たぶん新たな研究ネタがザクザク出てくる。
 思わぬ副産物も予想される。
 思わぬ発見、あるいは、数年後の漠然とした夢として描いていた研究が急に展開する可能性など、考え始めると、思わず口元が緩んで眼が宙を彷徨ってしまうような、そう言う可能性を含んだプロジェクト。

 なのですが、そう言う可能性を少しでも掘り下げよう、と言う展開は許されにくい予算でもあります。
 科研費だったら、当初の計画を多少変更して、科学的に意義深く興味深いポイントを掘り下げたりできるけど、受託研究費ではそうはいかない感じ。
 ここ1年間の手続きの連続で、見にしみました。

 この様な受託研究費を、塩水に例える人がいます。
 大型研究費をとって大喜び、しかし、これを使って研究を推進しようと思うと、実は色々と無理が出る。そこをなんとかカバーしようとして、別の受託研究費を申請・採択される。しかし受託研究費というのは、そもそも融通が効きにくいので、そこをなんとかカバーしようとして。。。。。のループ。
 そう、塩水を飲んだら喉が渇いて塩水を飲み続ける、の云いですね。

 考えて見たら、私がこれまでいただいたことがあるのは、科研費と企業財団からの寄付金。どちらとも、研究の進捗に柔軟に対応してくれるタイプの研究費です。こちらは真水のようなもの。必要なだけ飲めば良い、必要なだけしか欲しくならない。

 まあ、受託研究費を塩水=悪循環をトリガーするもの、というのは、さすがに言い過ぎです。大型で長期間の研究を安定してサポートしてくれる研究費としては、やはり受託研究費の方が一般的なわけで。
 しかし、これまで真水の存在しか知らなかった泡沫研究者としては、この受託研究費の仕組みとは色々驚きなのです。真水ならば泡もたつけど、あんまり塩がきつくなると泡もたたないのよ。。。。違うか

 つまりは、バランスが取れれば良いわけで。チリプロを進めながら、一方で十分量の(多分大量には要らない)真水の補給を計れば良いのでしょう。塩分だってとりすぎなければ必須なわけで、十分真水を補給すれば、より良いはず。

 というわけで、いまの気分は5年前あるいは7年前とほぼ変わらず。
 「必要な研究機器を購入するために、目を血走らせてカネの、いや、研究費の亡者状態、毎朝ラボについて最初の仕事は、コンピューターを立ち上げて、新しい研究助成金募集案内のチェック。いつもいつも研究助成金の申請書を書き続けておりました。
 に落ち着いています。
 いやはや、結局は同じところに戻ってきた。とはいえ、ラボが空っぽだったあの頃に比べれば、相当心強い状態になってきたのは確かです。
 
 
 


2018年4月13日金曜日

大麦とれんげの季節

 この研究所に着任するまでは、考えてみたこともなかったのですが、そろそろ大麦が実る季節です。
 ある朝出勤してみたら、大ムギばたけの上に白い網がかけてあり、そう、大麦が実り始めると、喜んでスズメが群がるので、それを避けるために白いネットをかぶせるのです。こちらで働き始めて七回目の春、すっかり馴染んだ春の風物詩です。
 そして、レンゲもさいています。今年はいつもより早いようですが、再来週あたりには、恒例のレンゲ摘み。周辺の幼稚園・保育園の園児たちが、先生に連れられてレンゲ摘みにやってきます。レンゲ摘み期間の駐車場利用についての注意がメーリングリストで回ってきました。

 さて、新メンバー特任助教のMさん加わって一週間です。
 そのうち、このブログも執筆していただこうかなどとも。
 彼は、博士課程では淡水生態系におけるアオコの振る舞いについて研究していたのですが、チリプロジェクトに参加するために、今年春からうちのグループに着任してくれました。着任して二週間、あっという間に実験も開始して、頼もしい限りです。
 彼の専門は、水圏生態学。
 話していると、細胞分子生物学の私とは非常に違った角度で物を見るのが、すごく新鮮。同時に、ヘテロシグマを扱い始めて大分になるのに、自分のヘテロシグマの生態学についての知識の浅さを、あらためて思い知る気分。
 彼の大学院時代の師匠先生の著書などをいただいて、改めて勉強しようと思います。
 10月には彼はチリに出向くわけですが、彼にも今までとは違ったいろいろを、こちらから吸収してほしいものです。

 それにしても。
 6年前の今頃、ヘテロシグマ株をいただいてきて、なんとか継代しながら、研究を始めながら、しかしラボはまだスカスカ、 クリーンベンチもサーマルサイクラーもなく、隣のラボにお邪魔して使わせていた頃のことをおもいだすと、朝から勢いよく働くラボメイトがいる環境って、嘘みたいです。
 今週は、チリプロジェクトの研究者間打ち合わせで忙しくも楽しい時間を過ごしたのですが、正直それが霞むぐらい、ラボメイトが増えたことによる活性化のインパクトが大きい。
  こんな日が来るとは思わなかった、という一方で、チリプロジェクトを足場に、もう一回りふたまわり、仕事の大きさを育てなければ、という、気持ちがむくむくと起こる週でした。
 
 

2018年4月6日金曜日

新年度始まり

 さて、明けて4月になりました。

 今年度の始まりは、ちょっと特別、変化盛りだくさん。
 まず、グループ編成が変更され、新年度より植物環境微生物学グループという新グループが出来、そちらの構成員となりました。
 研究の題材はそのままヘテロシグマ。もう一人の准教授がグループリーダーで、こちらは、まさに植物環境微生物の研究をしています。
 やっていることは違えど、環境微生物学、という共通項を持っているので、ゆるく繋がりながら仲良くやっていこう、といったところです。
 
 また、萌芽時代から数えて、初の博士研究員が5年の予定で着任しました。
 ここしばらくは、ヘテロシグマ研究はほとんどワンオペ状態だったので、これは画期的なこと、これを機に、ぜひとも研究を加速させたいものです。
 
 その一方で、とうとう本格的に始まったチリプロジェクト。着任した博士研究員は、こちらのプロジェクトに従事することになります。プロジェクト代表期間である京都大学、もう一つの参画機関である中央水産研究にも一人ずつ研究員が着任。来週のプロジェクトキックオフミーティング@倉敷での顔合わせを控え、いや、これでとうとう走り始めるんだな、と感慨深いです。

 新年度、といえば、もうひとつ重要な科研費採択結果発表。う、一つ落とした。。。。のですが、こう色々と変化があると、いつまでも落ち込んだ気分でもいられず、というより、嫌でも引っ張り上げられてしまいます。
 数年前までの、緊張して結果を待ち、それで全てが左右されていた頃から考えると、安定してきたともいえます。振り返ってみると、危ない橋を渡ってきたんだな、という気もして、いやはや、無事に今の状態になれてよかった。笑

 本日は、恒例の新歓BBQ、新しいメンバーと、新しい年度のスタートですね。本年度も元気に行きましょう♪