2014年12月12日金曜日

『赤潮会議』

 先日参加したNZ開催の学会で紹介していただいた会議に出席させていただきました。
 これは、日本の赤潮を継続してモニタリングしている団体の研究報告会で、全国各地から出席した研究者が、過去一年間の赤潮発生状況に関する情報を交換し、さらに赤潮に関する研究の進捗を報告するという会議です。
 赤潮の研究をしている大学関係者も多く出席する会議で、先日のNZ学会でお知り合いになった方々とも愉しい再会ができました。

 それにしても、これだけ多くの研究者が日本の多くの地点でモニターしていること、そして、その結果整理・蓄積されている発生状況、被害状況、毒性評価、気温水温栄養塩濃度その他の環境データに驚きました。実験室での分子生物学的なちまちました手仕事をしている私は、この手の話(といっても、この手の話が一番重要かつ花形だったりするのですが)を聞くたびに驚きを覚えてしまいます。まだまだ素人です。

 という、いかにも『会議』的だったのは1日目。2日目は、特に選ばれた研究者の研究発表でした。こちらは、研究者としてはよく知っている学会発表的な雰囲気でした。
 面白かったのは、韓国で発生した赤潮原因藻が、潮の流れに乗って、日本海を隔てて向かいの鳥取・島根辺りに漂流してきて、そのあたりでまた赤潮を形成しているのではないか、という話。海はつながっている訳で、また、海にしきりは無い訳で、しかし、モニタリングは各国で別々にしている。というわけで、これから、合同でモニタリングしなくちゃね、というような話が韓国からの出席者からでていました。

 発表会の最後は、今年度で退職される某研究所所属の研究者の発表でした。長らく…32年間!…赤潮の生態系における振る舞いの研究をなさっていた方なのですが、今回のお話は最近2年間の仕事のまとめ、とのことで、赤潮原因藻に寄生する生物の話。寄生生物、と一言にいっても、非常に多様性に富んでおり、まずは、その存在に気づき、その生物を同定し、生活環を明らかにし…という研究は、幅広い知識に裏付けられた確かな観察眼、顕微鏡各種を使いこなす技術、そしてなによりも粘り強く実験を続けることが不可欠です。『造詣が深い』という表現がありますが、こういう方のことをいうのだな、と思いました。
 仕事の質といい、量といい、素晴らしいものでしたが、なによりも、この研究所に勤務する研究者は、特に夏期は、つねにあちこちで発生する赤潮のモニタリングという喫緊事に追いまくられていることを知っていると、どうやってその時間をひねり出したのだろう、どうやってその熱意を続かせるのだろう、ということ自体に驚嘆します。

 自分って、うすっぺらい……。と、つくづく反省するのは、こういう発表を聞かせていただいたときです。分子生物学のありがたい点は、『遺伝子』にたどり着いたら後は皆同じ、という点ですが、しかし、遺伝子が生物を生物たらしめているわけで、その生物の面白さを丸ごと理解していないと、本当に面白いところを取りこぼしてしまう。

 と反省している一方で、今回の会でお会いした別の研究者からいただいた言葉。
『とにかく、毎年最低2報、仕事をまとめて発表しなさい。それが10年続けば皆があなたを知ってくれる。20年続ければ、押しも押されぬ世界のトップや。』
 私も、この分野で研究できたとして、あとぎりぎり20年。いろいろな意味で発奮させていただいた会議でした。

 

 


 
 
 

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