2013年5月17日金曜日

ケチってはいけない話

 GWは、実験三昧でした。
 というのも、例のヘテロシグマからRNAを取りたかったから。
 ヘテロシグマの遺伝子発現の制御について研究したいのですが、遺伝子発現=DNAが『発現』するには、DNAが、まずRNAに『転写』されて、それが最終的には遺伝子がコードしているたんぱく質として発現される、という段階を踏みます。
 DNAは、以前にも書いた通りにいわば細胞の設計図。たとえば、どんなタイミングでどんな遺伝子をどのぐらいタンパク質として作りたいか、という情報が書き込まれているのですが、この情報から、作りたいタンパク質の配列と大雑把な量という情報を、いわば『抽出』したものがmRNAという分子。どんな状態で育った細胞のなかで、どんなタンパク質をコードするmRNAがどのぐらいの量で合成されているのかは、細胞の仕組みを理解するのに有益な情報なわけです。

 で、このmRNAをとってくるには、まず、細胞が持っているmRNAを含むすべてのRNA分子を抽出して、その中からmRNAだけを取ってくればいい。
 ヒトからもマウスからもナズナからもトマトからもタバコからも簡単にとってこれるRNA。ヘテロシグマからだって簡単なはず・・・・・なのですが、新しい種を使っての実験は、常に多少の試行錯誤が必要なもので。

 ・・・・・多少試行錯誤しているうちに、ゴールデンウィークが終わってしまいました。

 実はこの実験、締め切りがあったるんです。5月中旬までに、何が何でも純度の高い、質の良いRNAをいろんな条件で育てたヘテロシグマから集めなければならなかった。外注で実験をしてもらうための材料で、キャンペーン価格(20万円引き!)が5月中旬申し込み分まで、だったんです。
 焦って実験してもなかなか決定打!な方法にはいきつかず、とうとう、しびれを切らして市販の「キット」を使うことに。
 お値段も高めだし、そもそも、これがヘテロシグマにあっているかどうかは不明です。一番小さい箱でも10セット入り、一つ使ってみたけどだめでした・・・というのは、結構悔しい。他に方法があればできれば使いたくなかった・・・・・のですが、どうしてもうまくいかなければ仕方ない。

 で、使ってみたら、なんと、びっくりするほど純度の高いRNAが大量に取れてきました。かかる時間も、試行錯誤した方法の2分の1程度。10サンプル抽出するためのキットが約9000円。はい、九千円です。九万円じゃなく。

 ううん、これなら初めからこれを使って、ゴールデンウィークは休んで遊びに行けばよかったのに・・・・・。

 いえ、実験屋にはとてもよくあることです。そもそも、血球細胞だの、ヒト組織だの向けに開発されているハズの『キット』が、ヘテロシグマなんていうあさっての生物のRNAをきれいにとってきてくれる、というのも驚き&めっけもの、ですね。
 というわけで、GWが終わってしまった次の週は、このキットをつかっての実験に明け暮れました。

 という実験室内のあれこれとは別に、実は5月第2週には、もうひとつ大きな行事が。
研究所公開です。
 今年は、総勢403名の皆様がおいでくださいました。私たちも、グループのブースを出して、今取り組んでいる研究の背景の説明などをさせていただきました。
 こういうときに、早く研究の「結果」をご説明できるようになりたいものです。とはいえ、いろいろな方とお話をさせていただいて、「知らなかった!」と喜んでいただけたりすると、とてもうれしいものですね。
 終わった後は、所内打ち上げ&有志打ち上げ。充実した週末でした。

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