2013年4月12日金曜日

週に一回

 これまでは、研究あるいはその周辺についてばかり書いてまいりましたが、今日はちょっと違う話題を。

 岡山大学資源植物科学研究所、の前身は、「大原農業研究所」。倉敷を訪ねたことがおありの方でしたら、「大原美術館」をご存知かもしれません。この、大原美術館の創立者である大原孫三郎氏(1880年 -1943年は倉敷紡績の経営者だったわけですが、この方は社会福祉にも強い興味を抱き、その方面でも数々の実績があります。たとえば、当時の日露戦争で急増した孤児のために孤児院を設立。加えて、経営する会社である倉敷紡績の工場内に尋常小学校を設立、また、働きながら学ぶ工員の教育をサポートするために設立した倉敷商業補修高校は、現在はスポーツが強い倉敷商業高校となり、野球部は甲子園に出場したりしております。さらに、工員たちの健康管理を目的に倉紡中央病院(現在の倉敷中央病院)を設立するなど、実は、現在倉敷に生活する私たちも、彼が行った社会貢献の恩恵にしらずしらずのうちに浴しているわけです。

 さて、この大原氏が倉敷周辺の農業の改善、ひいては農民の生活向上をはかるべく、当時最新鋭の機器を導入して、優秀な研究者をリクルートして創立した研究所が、当研究所の前身、大原農業研究所なのです。倉敷という小さな地方都市に、このように影響力の強い篤志家が存在した、というのは、珍しい、そして素晴らしいことだと思います。倉敷に移ってきたばかりのころ、大原家の話をあちこちで伺い、シンプルに感動いたしました。・・・・そして、実は、大原家は今でも当研究所の強力なサポーターでいてくださるのです。
 大原農業研究所の創立は1914年、つまり、来年2014年は当研究所の100周年記念(まだ英語版のページしかありませんが、そのうち日本語版も登場します)に当たります。1954年から岡山大学に移管されて、大学附置研究所となり、幾度かの改組・改名をへて、現在の「岡山大学資源植物科学研究所」となったわけです。

 と、大変長い『前ふり』でしたが、今日のブログの本題はここから、です。
 このようにいろいろと歴史のある研究所なのですが、一つ、問題、いえ、特徴が。

 建物が古い。

 ふるいといっても、もちろん100年前の建物が残っているわけではなく、研究棟はすべて岡山大学に移管されたのちに、国立大学の予算から建築されたもの。一番古い棟は昭和30年代築。冬は寒く夏は暑く、免震構造はもちろん当時のもので・・・・などなど、いろいろ問題はあるのですが、私個人は、外見は昭和30年代風、しかし設備はなかなか充実、というその落差を実はとても気に入っています。
 改築の話も出てはいるのですが、いまのところは、この建物を大切に使って研究しましょう、ということになっています。

 とはいえ、昭和30年代から積もったほこりは、並大抵のものではありません。
 岡山大学の一部とはいえ、メイン・キャンパスにある建物でないと、どうもお掃除のための経費などは多少控えめにしか回してもらえないようです。
研究所の中でも一番古いということになっている部分。手前は、
夏の間は水田=実験圃場となります。この建物、私の中では
昭和40年ごろの小学校かはたまた保健所、というかんじ・・・。
とはいえ、春はレンゲソウ、夏は水田(カエルがいっぱい!)を
実験室の窓から眺められるのは、ぜいたくな気分です。
というわけで、研究所の助教の一人が旗振り役で、毎週木曜日の朝、15分から30分ずつ、有志でお掃除をすることに。
 そりゃね、高額予算がついた研究所、新しい研究棟は空調完備、掃除なんてことはすべて業者さんに委託して・・・・というのがある意味の理想なのでしょうけれど。でも、週に一度だけ半時間ぐらい、こういうことに時間を使うのも、悪くない気もします。
 そういえば、昔小中高校にいたころは、掃除の時間ってあったじゃないですか。子供たちがするならば(大人がさせるならば)、大の大人が同じことをして、ナニわるかろう。

 私自身がなんといっても感心したのは、旗振り役が出したメールに応じて、結構な人数が参加して働いちゃうこと。旗を振ってくださった方のご人徳、という面はあるにしても、こういうのって、ほんと、日本人特有。13年近くの滞米中に、米国人だけでなく、中台露仏韓英伊独・バングラデッシュ・ボリビア・メキシコ・ブラジル・マレーシア・ウクライナ・カザフスタン・スペイン・イスラエル・パキスタン・インド・香港・クウェート・スウェーデン・トルコ・ベトナム人たちと一緒に働く機会に恵まれましたが、その経験を持って断言させていただきます。

 というわけで、最近は、雑巾・ほうき・スポンジその他掃除に役立つものを片手に、毎週木曜日朝は30分ほど、有志であちこちを磨いております。5月11日は当研究所の一般公開。きれいにして、たくさんの方たちに来ていただきたいものです。
 
 
 

 

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