2017年12月15日金曜日

1年後

 いま、うちのラボには、20系統ぐらいの、世界各地から集めたヘテロシグマがいます。
 去年、あちこちの国の藻類保存センターにお願いして、送っていただいたもの達。かれらのミトコンドリアゲノムの配列を解析し、結果として2本の論文を発表しました。
 
 この2本、ミトコンドリアゲノム上の地域特異的な配列=MtORFvarを見出しました、という論文だったわけですが、それならば、世界各地のヘテロシグマ集団がどんなMtORFvarを持っているか、を多地点で比較することを皮切りにして、ヘテロシグマという種がどんな経路で現在の分布に至ったかが解きあかせたりして、と考えています。
 
 言ってみれば『種の遍歴』を解き明かすプロジェクト、なわけで、アイディアはなかなか壮大。世界中あちこちからヘテロシグマ株をまとまった数手に入れて、その配列を解析して。。。。の積み重ね。うまくいくかどうかわかりませんし、何より手間と時間はタップリかかります。とはいえ、今のアプローチを取る以上、涙が出るほど研究費がかかる、というわけでもなさそう。手間暇かけてそれほど大きくない予算で、じっくりと何年もの時間をかけて大きな絵を描くことを目指す、というのは、大学で、基礎研究に携わる立場だからこそ、研究してみたい・研究できるタイプのトピックです。

 一方で、当然ながら、これをするには『世界中のあちこち』からヘテロシグマ入手の必要が。さっと行って海水を汲んでくる、というわけには行かず、あちこちの海洋藻類研究者との共同研究が不可欠。
 ありがたいことに、ここ1年で、チリとブラジルに、信頼できる共同研究者たちを確保した感があります。日本人で、南米と太いパイプを持っている人って、実は結構少ないことからも、これはなかなか幸せなことです。

 ついでに、もう少し別の地域とも手を組んでみたい!なんて思い、先週の会議で講演をしてくださった先生にご相談したところ、来年開かれる国際学会で、ある方を紹介してあげようか?というお言葉をいただき、わあっ!と一気に盛り上がったのですが。できれば早く始めたい研究ではあるし、まずは、直接連絡を取ってみて、お話がつながらなければお願いします、ということで、まず直接コンタクト。夕方メールを書いて帰宅し、自宅でメールチェックすると、お返事が入ってる!株供与についてご快諾をいただき、直接やりとりする若手研究者にCCが入っていました。

 喜んで、ご両人にお返事。今後、こんなことをやりたいので、手始めにこのぐらいから始めて、よかったらまた相談に乗って欲しい。。。とメールをしたところ、ボスのほうから「喜んで。もし将来、もっと話が発展することになって、また、こちらも労力を割くことになった場合には、株供与というより共同研究、あるいは共著という形でお願いできればと思います。」という趣旨の、極めてフレンドリーな表現のメールが。
 自分のチームの若い研究者に労力を割くことを求めるわけで、相手に対して、その人の労力に見合ったいわば「見返り」を求め、さらにその人と仕事の意義を共有するのは、ボスの役目。これを、最初の段階で、さらっとフレンドリーな表現のメールで、というスマートさ、ぜひ真似させていただこうと思います。もちろん、外からのアプローチにオープンマインドなところも。
 実は、このボスは、この分野では知らぬもののない、大きな機関の部局責任者でもある、お忙しい方。こういう方に、直接メールで問い合わせて、こんな風にささっと軽やかに話が進む、というのは、、、、これは、お相手のご性格はもちろん、実にこの職業@非営利機関ならでは。仕事の目標が、「お金を得ること」だと、利権についてのあれこれが邪魔をして、「あらおもしろそう、ちょっと一緒にやってみよう」とはいきません、よね。こういう風にコンタクトをとって、新しい仕事の目処をつける時って、いつもそこに思いがもどり、幸せな仕事に就けたものだと、本当にありがたい気分になります。
 
 

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