2014年3月28日金曜日

そろそろ収束傾向ですが・・・・・先週の続き

 今回は、剽窃について。
 剽窃って、最初に出てきたときには、なんて読むのさ?というぐらい特殊な言葉に見えましたが、つまりは引用先を明示しないで盗用することを指します。

 何で、剽窃しちゃいけないの?と理由を聞かれれば、まずは、著作権の問題。引用先を明示しないと、無断転載に当たってしまいます。

 面白いことに、自分が著者である論文をそのまま丸写しして引用元をしめさなくても『剽窃』になり得ます。なぜかといえば、論文がある出版社から専門誌上に発表されるときには、著者は論文の著作権を出版社に譲渡するという手続きを踏むのです。だから、私が書いて論文として発表した文章を、私がそのまま引用先を書かずに丸写ししても、これもアウト。自己剽窃、という、一見矛盾した状態はこういう場合に起きえるわけです。特に、以前の論文発表した図表や写真などを、自分が書く総説に使いたい、等という場合には、原則としては以前の論文を出した出版社に問い合わせて、転載の許可を取らなければならないというわけです(雑誌によっては、著者による再利用であれば引用元を明示していれば可と明記しているものもあります)。

 というわけで、あの騒動の最中に、某大学教授がテレビのコメンテータとして出演して、「誰もが認める事実なんだからコピペは全く問題ない」とおっしゃったのは、大間違い。大学教授にこんなことを言っていただいては大変困ります。

 逆に、極端に言えば『コピペ文・・・・・・(引用元を示す情報)』という風に、一つ一つのコピペ文に出所についての情報をきちんと示せば、一応OKということになるわけですね。
 とはいえ、やはり自分の文章を書くのにコピペ連発では文章の体をなさなくなるわけで、元情報としてコピペしても、いろいろいじっているうちにもとの文章の情報は残っても、文章自体は残らないのが普通と思われます。

 ここまでは当たり前といえば当たり前。
 しかし、著作権なんていう法律用語を持ち出さなくたって、まとまった量の文章の剽窃は、やはり研究者としては相当恥ずかしいことです。
 論文を書こうという時に、剽窃し得る部分としては、Introductionと Materials and Methodsでしょう。Materials and Methodsのほうは、そもそも丸写しで用が済むならば、○○らによる△△年に発表された論文参照、と書けばおしまいですし、細かいところを変えたのならば、大部分は○○らによる△△年に発表された論文の方法により、××の部分を変更した、と書けばよい。

 問題はIntroductionのほうです。

 Introductionは、その論文の研究を計画するきっかけになった背景を説明した部分。多くの先行研究の情報を整理して、そこから立ち上げた自分のオリジナルなアイディアを説明することが目標なわけです。やはり、ここが多くの引用文献にのっとって緻密に組み立てられたものであれば、論文の『格』が上がります。
 難しいけど。
 自分の研究の根幹にかかわる部分で、しかも難しいからこそ、ここの部分をはじめから投げて剽窃に走るというのは、見つからなくても、大変よろしくないわけです。とくに、これが、博士号という学位に値するか否かの審査に付される博士号論文ともなると、そもそも博士号を授与して大丈夫?という疑問は当然出てきます。そういう意味でも指導教官や審査員もしっかり目を光らせないといけなかったわけですし、そもそも、剽窃OK!なんていう教育はあり得なかったわけです。

 ところで、この件についていろいろな研究分野の方が文章を書いていらっしゃいますが、そのうちのおひとりが、『いわゆる理系の実験科学者は、イントロを大変粗末に扱う』という意味のことを書いていらして、ドキッとしました。

 以前から、本当だったら、実験を進めながらじっくり時間をかけてイントロを書き上げ、結果がそろったところで図表を用意して、結果・考察と書き上げて、実験方法を付けた上で要旨を書き上げて、最後に文献を付けておしまい、というのが本筋だとおもっているのですが、なかなかそれができない。

 でも、イントロがしっかりしている論文ほど、読んでいる方だってひきつけられるし、論文としての格があがる・・・・ということは、いわば『上のジャーナルが狙える』研究になる、わけです、考えてみれば。

 今回の騒動、見ていると胸が痛くなったり妙に消耗したり、ということが多かったのですが、私にとって、一つ収穫だったのは、この、Introductionの大切さを思い出させてくれたことでした。

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