もともとは、本のタイトル。
寡聞にして存じませんでしたが、Blue Oceanは、『他に競合するもののない新しい領域』のこと。「他に競合する者のいない新しい領域で勝負する」といった方針をあらわすのだそうです。そもそもは、マーケティングのお話しですね。逆に、既に競合相手がいる領域は、Red Oceanというのだそうです。
先週書いた、所内発表会で、何人かの同僚たちから「なんで、赤潮原因藻に興味を持ったの?」と聞かれました。
答えは、「面白そうで、扱いやすそうで、しかも他にやっている人がいないから」。
ヘテロシグマは、
1.赤潮を起こす=自然界で、目立った面白い現象の原因である。
2.単細胞で、分裂で増える=生活環が単純でわかりやすい(はず)
3.現在の次世代シーケンス技術をもってすれば読めそうな程度のサイズのゲノムを持つ
4.生態学的見地からの研究はされているものの、分子・細胞レベルの研究をしている人は、皆無。
ということから、ヘテロシグマに目を付けたのです。(今年の2月に、ヘテロシグマを使っているという記事を書きましたが、そこでは、「なぜヘテロシグマに目を付けたか」については意識してぼかして書いてあったことを、記事を読んで思い出しました。)
このポストに就くまでは、私は、植物ウイルスであるタバコモザイクウイルスと植物(タバコとか、ナズナとか)の間の分子生物学的研究をしていました。タバコモザイクウイルスは、実は人類が最初に『ウイルス』として発見したものなんです。で、その宿主であるタバコとか、植物を研究するときに標準的に用いられるナズナにおけるタバコモザイクウイルスの研究は、それはそれは歴史が長い。
いまでも、関心を持っている人が、たくさんいる。これぞ、Red Ocean。
多くのグループが、同じモデル生物で似たようなトピックで研究をすると、当然、競争が激化したり、あるいは相反する知見が生じたりします。となると、残念ながら、面倒なことになる。競争相手に自分のやっている研究の先を越されるのではないかと四六時中ひやひやしたり、あるいは、論文を書いて査読に廻ったら、ライバルに意地の悪いコメントをされて困ってしまったり。
私自身は、この状態を『小さい池で多くのヒトが釣りをするようなもの』と思っておりました。長年研究されてきた分野だから、釣りやすくて大きな魚は、もう釣られてしまっている。残る魚の数は限られているのに、釣り人はたくさんいて。。。。。腕がいいヒト、いいポイントを捜し当てたヒトはいいけれど、そうでないと手ぶらで引き上げることに。そして、手ぶらで引き上げる、とは、研究者の人生では、結果が出せなくて、悪くすると挙句失職ということを意味するわけで・・・・・。
私は、この小さい池で釣りをする多くの釣り人のひとり、をずいぶん長いこと経験したわけです。で、手ぶらで引き上げて・・・・・研究をやめていったひとも少数ながら知っています。
で、思ったんです。
もう、小さな池はいいや。ほかにだれも釣りをしていないところにいって、のびのびやりた~~い!!
というわけで、ああだこうだと頭を絞っていたのが、ここに着任する前の2か月間。いきなり『大海に釣り船・オールで漕ぎ出してみました』感満載ですが、最近とくに、やっぱり広い海っていいわ、と思います。
ところで、このBlue Ocean Strategyを成功させるための4つのステップは、
- how to create uncontested market space by reconstructing market boundaries
- focusing on the big picture,
- reaching beyond existing demand
- getting the strategic sequence right
研究に強引に当てはめれば、
- 新しい研究領域をみいだし、
- 視野を広く持って、意義の大きい研究テーマを選択し、
- これまでに存在しない斬新な研究計画を発案し
- 実際の実験を行い結果を出す。
それにしても、Blue Oceanなんていう冴えた表現で自分が漠然と夢見てきたことが表現されていると、心強くなりますね。
というわけで、赤潮に青い海を求めて、3.にあたる(つもりの)研究費申請書を上げまして、これから、また、4.の実行ステップに戻ります。
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