2013年10月4日金曜日

学生さん向け記事:大学院進学から研究職、のあいだの道筋あれこれ(1)

 そもそも、このブログは、大学院進学を目指している学生さんがみてくれないかな、あわよくば、ここで研究してみたい、と思って新メンバーとして加わってもらえたらいいなぁ、という、下ゴゴロがあってはじめたものです。
 その割には、学生さんの役に立ちそうな情報は、何も書いていない気が・・・・・。

 というわけで、今回は、夏休みの先進コース集中講義『大学の研究者としてのキャリアパスとは』で出てきた話題についてです。タイトルからして、「学生さん、読んで!読んで!!」感満載な記事ですが、それはさておき。

  この集中講義の目的は、修士1年生の学生さんたちに、大学で研究する人生とは?全般についてのイメージを持ってもらおう、というもの。
 大学で研究する人生を選んだ人間たちは、どのようにして、大学で研究するポストにいたり、どのような気持ちでそこに居続けているか、は、その外にいる人たちには結構わかりにくいらしい・・・・・ことから、実際に大学で研究する人生を選んで生きている人々=大学教官比較的若手数人(准教授が4名、助教(私です)1名)がざっくばらんにおしゃべりするのを学生さんたちに聞いてもらって、感触をつかんでもらう、という目的で行っているものです。

 他4名は男性・准教授ばかりだったのですが、とりあえず女性の意見も聞きたい、ということと、「ざっくばらん」に話をしそう、に見えるらしく(そのとおりですが)私も呼んでいただけたということのようでした。(青字にしてある部分は、10月17日に書き足した部分です。少しは分かりやすくなったでしょうか・・・・?)

 さて、この集中講義に先立って、取りまとめ役の先生が、受講する学生さんたちにアンケートを実施してくださいました。そのうち3点について
①博士課程(後期)進学についてどのようなイメージを持っているか?
②研究職になるつもりはあるか、あるとしてどのようなキャリアパス(企業・研究所・大学など)を考えているか?
③海外留学を考えているか?

①博士課程進学のイメージ、について多かった学生さんたちの答えは、「企業に行きたい人よりも、大学に残りたい人が進むイメージが強い」でした。出席していた講師陣は2名工学系、3名バイオ基礎系だったのですが、講師の間で一致したのは、「特に工学系は、博士取得後に企業に就職する人が結構いる」。当然、大学院時代に研究していたテーマによって、企業に職を得やすい人とそうでない人にわかれそうではあります。また、バイオ基礎系でも、企業に職を見つける人がいます。博士課程進学=アカデミアに固定、というわけではないのですね。

 一般企業への就職の可能性が狭まりそう、という学生さんの意見もありましたが、これに対しても、講師陣はそうでもないかな、ぐらいで一致。ただ、研究以外の業種への可能性はやはり狭まるかもしれないですね。

 博士をとればその道のプロになれそう、という意見もあったのですが、これは、「プロになるための入り口が博士課程と博士取得。免許取得みたいなもので、本当にプロになるならば、その後の経験が必要」で講師陣が完全に一致しました。

 そう、自嘲的な表現で、「博士号は足の裏についた米粒と同じ。とってもくえない」という言い回しが昔からあります。初めて聞いた時は、半秒ぐらいぎょっとしました。でも、考えてみれば、どんな資格でも、『取っただけで食える』なんてものはそもそもございません。ステイタスが高いとされる医師免許にしても弁護士免許にしても、免許取得はその業界への入場券にすぎません。その業界に入ってしまったら、見渡す限りみんなが持っているその免許。極端な言い方をすれば、その時点で免許はもっていなくちゃいけない紙切れ。そこである程度の仕事をして認知されて食べていこうとおもえば、免許取得までの人生よりもずっと長い間のOn the Job Trainingが不可欠なわけです。博士号も例外ではない、というだけの話です。

②研究職につきたいと思うか?という問いには、多くの学生さんが『企業の研究職につきたい』とこたえています。これは、やはりお給料と安定性が頭にあるようです。博士というと、万年研究室にこもって、金欠な印象、という人もいましたし、大学人=お金がない、は、昔から変わらない通念のようです。

 ま、公立大学人のお給料は、高くはないですね。最近、国家公務員の給与が削られましたが、国立大学の教官もしっかり削っていただきました。高給がとりたければプライベートセクターへ、は、事実といっていいでしょう。ただ、どうしようもない低賃金でもないですね。

 職に就いてからも問題ですが、何人かの学生さんたちのコメントから講師陣が特に感じ取ったのは、「博士課程に行くには、その間の経済的負担が大きすぎる」ということでした。

 実は、最近の多くの大学院で、RA制度というのがあります。Research Assistantの略ですが、学生という身分でも研究室のプロジェクトの一端を担って研究しているわけで、これに対して人件費が支払われるというもの。つまり、大学院生をしながら、お給料がもらえる場合があるわけですね。また、大学院の早い時期に自分の名前が入った論文を発表できれば、「日本学術振興会特別研究員」になれる可能性が高くなります(リンクはこちら)。これは、研究課題を申請(=応募)して、研究員としてお給料と多少の研究費がもらえるというもの。応募したからともらえる、というわけではなくて厳正な審査がありますが、これに通れば、生活費+研究費が出る上に、履歴書に書けば実績として評価されるというものです

 学生として博士課程で研究をしながら、生計を立てる方法は、実はちゃんと存在しているんですね。こういう情報が、あまりいきわたっていないようです。「博士課程にはいきたいが、家庭の経済状況でムリ」と考えている方にはぜひとも考慮していただきたい方法です。

長くなるので来週に続きます。読んでくださった学生さん、是非来週も読んでくださいね(笑)


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