2013年8月2日金曜日

出羽守バナシ その3: Interview@米国  ≠ 面接@日本 

 今回は、米国の大学で教員ポストを得るための選考、とくに面接についてです。書き始めたら、削っても削っても長くなってしまいました。

 なぜ私が13年近くも米国にいて、いきなり日本に帰ってくることになったかと言えば、米国ではテニュアトラックの大学教員のポストを得ることができなかったけれど、日本ではたまたま得ることができたから、です。最終的に得ることはできなかったけれど、中途半端に最終選考までは残ってしまったことが数度ながらあり、となると、もう一度挑戦すれば次は通っちゃったりして、なんて思っているうちに滞米が長引いてしまった、というあたりが真相です。
 専門誌に出てきた求人広告を見て、書類を整えて提出すると応募先でああだこうだと一次選考され、このうちから4~5名が選ばれて、とここまでは、たぶん万国共通。で、この数名がInterviewによばれます。
 
 で、面接。先日書類の山から出てきた、私自身が経験したある大学での面接の日程は、以下の通りです。

1日目
 4pm                                近くの空港に到着、大学まで移動
 6pm-                                夕食  選考委員と
2日目
 7am                                朝食 選考委員と他学部教官と
 8:30am                              学群長と面談
 9:15am                              付属研究施設長と面談
 10-10:30am                      セミナーセッティングの確認、休憩
 11 am                               セミナー45分発表15分質疑応答
 0-1pm                            ランチ 大学職員(教官以外)と
 1-1:45pm                       大学院生・学部生たちとミーティング
 2pm ビルを移動して        教官Aとミーティング
                  以降、教官3名とそれぞれ30分ずつミーティング
 4:30-5:30pm                     他キャンパスへ車で移動、ホテルにチェックイン
 6:30pm-9pm                     夕食 他キャンパスの教官と
3日目
 7am                                   朝食 選考委員と他学部教官と
 9:30am-                             教育部長と面談
 10:30 am-                          教官Eと面談
                          以降教官2名と30分ずつミーティング
 0 - 1:15pm                         ランチ 2つの研究グループと
 1:30pm- 2pm                      教官Hとミーティング
 2-3pm                                選考委員全員とグループミーティング
    3pm -                                 大学キャンパス見学
 6pm-9pm                        夕食 選考委員長・副委員長と
4日目         帰宅

 …写すだけでも面倒くさいこのスケジュール、すべて終わるのに丸々二日以上。
 2日間朝の7時から夜ご飯を食べ終わってホテルまで送り届けてもらえるまで、一人になれるのはお手洗いに行くときだけ。それ以外は、知らない人ととっかえひっかえ面談・おしゃべり・・・・・というのは、この『面接』以外ではなかなか経験できないものでしょう。クタビレマシタ。

 受ける方も大変ですが、面接審査をやる方も大変。この学部は4名の候補者を面接したので、彼らはこの選考に、候補者と会うことだけで8日使ったことになります。でも、考えてみれば面接官たちは将来の同僚を選ぼうとしているわけで。精神的な問題を抱えている人だの、会話力に問題がある人だの、あるいは英語は通じても話が通じない人だの、素晴らしい業績を上げてはいるが、実はボスの言うとおりに素直に仕事をしてきただけで自分ではあまりものを考えない人だのは避けて、よい実績を持つだけでなく、コミュニケーションもスムーズで、問題なく研究を進め、さらに学生の指導も任せられそうな人を選びたいに決まっています。そして、2日間もいろいろな話をしていれば、小手先の技術だけではカバーしきれないもろもろが面接者が気付かないうちに人目にさらされているわけなんですね。

 こういうのを受けつづけ、これがフツーと思い込んだのちに初めて日本の面接を受けたとき、その『落差』には驚きました。1時間半たらずでセミナーから面談からすべて終了。これでなにがわかるのだ~~、あ、これが出来レースというやつか、私の面接は消化試合だったのですね、と大いに納得し・・・・・・・実は、まじめにやっていたということを後で知ったこともあります。

 でもね。一度大学に任期なしで人を採用したら、困った人だったとしても、もともとその大学にいた教官たちの同僚として居ついてしまうわけです。また、任期付の人であったとしたら、出ていくときまでにしっかりとした実績を出してもらわないと、まさにその人の生存に関わるわけで。数年後に送り出す側だって、ひやひやするような人はいやでしょう。なにより、大学とは教育機関、研究・教育実績とともに、そもそも人格だの(表面に出てくる)倫理観だの挙動素行だのに問題があるような人に来てもらっては大学の社会的責任にかかわる。

 そう考えると、日本の大学、もう少し真剣に時間をかけて、矯めつ眇めつ人を選ぶ能力を身に着けないと、ゆくゆくは、大学教育のレベルにも問題が出てきて・・・・・・ということになってしまうのではないでしょうか。
 単に、他国のマネをする、というのではなくて、他国の高等教育機関がどのぐらい真剣に人選に力を注いでいるかをみて、よさそうなところだけ取り入れれば、国の高等教育レベル=国際競争力にじわじわと貢献するのではないかと思うのですが。
 
 いかがでしょう?
 

 
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿