昨日は、こちらに着任して一番最初にいただいた研究費を助成財団、長瀬科学技術振興財団の30周年記念の会に出席してまいりました。いただいた際の、贈呈式に出席した時から、6年経ったんだわ、と、ちと感慨深いです。
大阪で開催されたのですが、この会で、なんと、ノーベル賞受賞者 大村智博士による講演会が行われるということで、楽しみにしておりました。
大村先生といえば、微生物より数々の抗生物質を発見し、さらにそれらを改良して、人や動物の感染症治療に多大な貢献をされた功績をたたえてノーベル賞を受賞された方です。
特に、抗寄生虫薬であるイベルメクチンは、もともとは線虫の成長を抑制する化合物として開発されたものが、昆虫や蜘蛛に対しても効果があるということで、これらが起因している病気の治療・拡散防止に大きく貢献したもの。犬のフィラリア症の治療・予防に始まり、最近では皮膚病の疥癬(ダニが原因なのだそうです)の治療にも使われているそうです。なにより、いわゆるNeglected Tropical Diseaseとして知られてきた、熱帯の風土病であるオンコセルカ病や、リンパ系フィラリア症の抑制・治療、そして、地域の住民全体に投与することで拡散予防が実現し、2020年〜25年には撲滅の見通し、というお話を伺って、『科学ができること』の大きさに改めて感動。抗生物質の開発に始まり、研究成果から上がった収益をより社会に役立てるための病院の設立にまで、大村博士ご自身がご尽力されたというお話を伺い、スケールと行動力に圧倒されました。
帰ってくる新幹線の中でも、今、こちらを書きながらも、思い返して余韻を噛み締めています。
私自身が理学部出身だからか、研究というのはまずは面白いのが一番大切(その他のことは、そのあとのこと)という発想が抜けないのですが、大村先生のお話は、まさに科学が世界を変えたストーリー。穏やかな、ユーモアを交えた語り口で、普通のことどもを語るようなリズムで語られた内容は、ちょっとやそっとのドラマでは書ききれないようなお話でした。
という一方で、この財団からいただいたのは、赤潮の研究を始めて、初めていただいた外部研究資金。なんというか、私にとっての、ある意味の『原点』なのです。この研究費の申請書に目標として記述したことで、いまだに実現していないことが多々あるのは心が痛むことなのですが、原点、にまつわる会で、良いお話を聞かせていただきました。
スケールは違うものの、実は、私たちが参加しているチリプロジェクトも、世界の片隅でお役に立てるような成果を目指しての仕事。とにかく、まずは目の前の基礎研究をしっかり、という思いがあるのですが、一方で、この講演会で伺ったお話は、このプロジェクトが進むにつれ、思い返すことになると思います。
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