2017年8月25日金曜日

8月も終わり

 どうも、季節の移り変わりというのはタイトルに使いやすく、このタイトルも今ままで数回使った気がします。
 思ったよりも暑い日が続かなかったような気もする今年なのですが、しかし、早朝の空気の湿り気の多さは、ここ数年なかった気が・・・・。涼しくなるの、大歓迎!はやくこいこい秋の風、です。倉敷の残暑、長く厳しいので・・・。

 さて、暑さにもめげずに水面下で進行してきたチリプロジェクト。
 国境を越えた共同研究が、国内での研究プロジェクトとここまで違うとは。予想範囲内とはいえ、実際に手を動かして各種書類を作っていると、しみじみとそのおおごとさが身にしみてきます。

 プロジェクト採択以降、さらに細かいところを詰めて詰めて、第3回勉強会もやってきます。
 そろそろこの計画段階もクライマックス。
 計画書も、少しずつ目的の異なるバージョンを多数作ってきて、そろそろ何と何があったのかわからなくなってきた感じ・・・・・そして、当たり前といえば当たり前なのですが、国際共同研究ということは、終始日本語というわけにはまいりません。つまり、同じものを日本語・英語両バージョンで作らなければならず、さらに英語バージョンを翻訳したスペイン語も欲しい!となると、手間はン倍。とはいえ、プロジェクトでお世話になっている研究グループ以外の方々にかなりお世話になって、こちらも終わりが見えてきた感じ。

9月に入ったら早速三たび目のチリ訪問が予定されています。
 今回は、実際に行う研究について細かいツメの議論を行い、必要な書類にサインをし、実際の研究活動に移るための最後の山。。。のハズ。
 南半球への長旅も、だんだん勝手知ったる気分になってきました。荷造りも長旅対策も、やはり慣れは大切。またしても片道四十時間近い長い長いフライトを思うと、ううむ。。。。とはいえ、今回は、チリ北部の都市、アントファガスタを初めて訪ねます。今度こそ、細かい研究計画の話をしっかりしよう、と思うと、実はやっぱり楽しみだったり。
 わずらわしい手続きも、楽しい打ち合わせも一挙に済ませて、早いところ研究本番=お楽しみ部分突入!に持っていきたいものです。

2017年8月18日金曜日

仕事術あれこれ

先週のマイクロサバティカルの続きです。

 コースの内容とともに、出席者とのやりとりも、来てよかった!!と思った理由の一つ。
 今後の進路を真面目に考えている大学2年生に始まり、大学院生が最も多いのは予想通りだったのですが、それ以外にも臨床医・公務員・獣医・元物理学専攻某有名家電メーカー研究員に始まり、某国立研究所室長、とか、某私立大学教授とか、年齢層も二十歳そこそこから50代と広い上に、日本人は半分ぐらいでしょうか。このコース、講義と質疑応答は全て英語で、というコースだったのです。

 授業とハンズオン実習の他に、異なる感染病を課題として与えられ、それについてのモデルを作って質問に答え、最後にみんなで発表、という「グループワーク」というのがありました。
 このグループメンバーとのやりとりが、楽しいだけでなくしみじみと勉強になり、とっても良かったのです。

 どのグループもそのように振り分けられていたのですが、私たちのグループも、感染数理学専攻の大学院生・理論物理学専攻メーカー勤務・保健経済学(というのか?)Associate Professor・米国感染病コントロールセンター(CDC)スタッフ+私(生物学研究者)という、普通の生活ではなかなか同席するチャンスがない取り合わせ。
 香港人二人・米国人(でもご両親は日本人、ハワイ出身)・日本人二人、と言う組合わせ。で、話し合い取りまとめを、なんとなくCDCスタッフが取り持ってくれるのですが、話のまとめ方がとにかく上手。
 ホワイトボードに話し合いの要点を書き出していくのですが、いかにもハワイアンなちょっとのどかな話し方をしながら、肝にして要を得た箇条書きに、感心してしまいました。CDCの中でも、米国のどこかで、すわ、感染症が流行か?!と言うほんの初期情報を得て、現場に飛んで、その信ぴょう性を確かめながら必要な対策を練り、行動に移す、というのが彼の仕事なのだそうです。そういう事態が起こりがちなのは、米国も大都会ではなく、辺鄙な委任統治領とかなわけで、住民が不安な気持ちになっている場所に入り込んで、情報収集→事態収拾を図るのには、目的をしっかりもって、穏やかに信頼を勝ち得ていくことが不可欠なのだそうで。摩擦は起こすな、押し付けるな、でも、とにかくGoal-orientedに、という訓練を受けるのだそうで。
 いわゆる、強力なリーダーシップというのとは真逆のリーダーシップの手際や、間違いなく情報を共有するためのちょっとしたスキルは、すぐに身につくものではないものの、目にできただけでもいろいろ勉強になりました。

 元・理論物理専攻さんは、「英語は苦手なんですよ〜〜。数式で書いてくれるからわかるけど、英語だけだったら困ってましたね〜〜」となんでもなくおっしゃるのですが、n次元行列式と微分方程式とプログラミングにやられっぱなしだった私にしてみれば、「・・・それって、この講義がフランス語でもイタリア語でも理解出来ちゃうってことか?!」と、愕然。英語で説明していただいてもわからない数学のいろいろを、日本語で教えていただいて、や〜〜、やっぱりもうちょっと大学教養レベルの数学を勉強しなおしてみよう、と思いました。今更それを勉強してどうなる?!というのはもちろん大切な自問なのですが、興味があることならば、ま、目先の得に結びつかなくてもよし。
 また、次に勉強するとすれば、どのプログラミング言語だろう・・・と考えていたところを、実は元・理論物理専攻さんが作成されたPhython速習コースをお持ちだということで、これは、と、受講登録してしまいました。こういう、ちょっとした耳より情報というのが、外を歩いた時に得られる大切な栄養ですよね。

 保健経済学Associate Professorは、香港大学で博士号を取る間に、Oxfordに留学しており、その後帰国して中国本土の大学でAssociate Professorの職を得るとともに、現在Harvardで修士を習得するべく勉強中。プラス、日本にもクロスアポイントメントの職があるそうなのですが、、、、見た目30歳ぐらい??
 この分野は、どうも、ご本人の数学のセンスでかなりの部分が決まるのか、若くして大きな仕事をする人が多い分野なようです。現在の仕事の話を伺うと、ニコニコ楽しそうなのですが、おっしゃることは野心的・・・いるんだなあ、こんな人。。。。
 
 そして、感染数理学専攻大学院生。彼は、主催者グループに所属する大学院生なのですが、やっぱりこのトピックに対する理解が深く、一人落ちこぼれかけていた私はかなりフォローしてもらいました。よーく考えて、考えていることを『全員にわかるように』言葉に出してならべていくのが印象的。

 限られた時間の中での課題解決だったわけですが、CDCスタイルの情報共有術+元・理論物理専攻さんの数学センス+保健経済学Associate Professorのワクチン接種とコスト問題への見解+感染数理学大学院生の、この分野特有の考え方のインプット+それでもなんとなく理屈が通らない点に素朴な疑問提供による議論促進(私です。苦笑)→解決(みんなで。笑)で結構綺麗にまとまった発表になりました。
 最後に5人で写真を撮ったりして。ちょっと忘れたくない、貴重な体験でした。

 
 

2017年8月10日木曜日

大人の夏休み、改め....

 やってまいりました、修行道場、改め、Summer boot camp of infectious disease modeling, 2017@統計数理研究所、立川、東京都
 
 10日間の感染数理モデリング短期集中講座です。特に感染数理モデリングに関わりたい初学者に焦点を絞ったコース。数理生物学的モデリングとか、シミュレーションとか、実は学生の頃からの漠然とした憧れがありまして。とはいえ、自分で教科書読んでみたけど、いまひとつわからないし・・・。なんとか勉強したいけど、どうも私には独学は無理らしい。なんとかしたいな .... と思っておりました。 
 2年ほど前に、調べ物をしていて見つけたこの短期コース。理論とともに、 Rなども使った実践講座もあるとのことで、一度受けてみたい!と思い、実は去年受講手続きまでしたものの、仕事の都合でギブアップ(ゴメンなさい‼︎)。今年雪辱を果たしました。

 予習しないとついていけないだろうと、実は去年の受講に向けて一昨年からぼちぼち予習を始め・・・・大学教養レベルの微分・積分、線形代数、確率・統計ときたのですが、全ては終わらず・・・・、直前になって、あ〜あ、結局全部は終わらなかったし、そもそも一昨年ぐらいに勉強した部分は結構忘れちゃってるし。10日間もあるのに、結局ついていけなかったら、悲しい・・・・などとうじうじ思い煩いながら向かったのですが。

 いやはや、行ってよかったです。10日間、みっちり総数40講義に加えてPCを使った実習に加えて、参加者を8グループに分けて、チームでそれぞれ違った課題に取り組むグループワーク。公式には朝9時からほとんどの日は夕方5時半まで、長い日は18:45まで、というぎっちりなスケジュール。
 まだまだわからないことだらけながら、微分方程式と行列式を解いて出てきた式のパラメータをちょっといじるだけで、ガラッと感染者数が変わったりするのは、単純に興奮します。興奮するタイプだからこそ受けたかった講習なわけで、つまりは堪能したわけですね。
 自分たちの研究にすぐに役立てることができるかは別として、有給+夏休みをつぎ込んで、朝から晩まで、自分が訓練を受けてきたものとは全く異なる思考様式にどっぷりつかることができたのは、本当に贅沢でした。これを糸口に、何と何を少しずつ勉強したいかもメドがついたような気がしています。

 ところで。
 興味はあるけど、そもそも役に立つかどうかもわからないことに大の社会人が10日も使うって、我ながら何なのだろう?⁇と何だか気後れしていたのですが。コース初日終わりぐらいに仕事関係のメールで連絡を取り合っていた尊敬する同僚に、「下手の横好きで感染数理学入門コースに来てるのですが。何やってんだろう感満載です〜」と書き送ったところ、「タイミング的にもサバティカルで新しいことを学んでいると思えばぴったりなのでは」というお言葉をいただきました。
 サバティカル、というのは、欧米の多くの国で特に教育・研究職に伝統的に認められている、長期有給休暇と言えば良いでしょうか?だいたい7年間に1年間ぐらいの割合で、本来の所属機関から離れて、別の大学だの研究機関だの(別の国でももちろん OK )で色々勉強するために認められているリフレッシュ制度のこと。私も今のポジションに6年いたわけで、これが欧米ならば半年から1年のサバティカルが認められる時期。それを自主的に取ったと思えば、ということですね。
 強力な講師陣・400ページある教材・老若男女の高スペック受講者に囲まれて、気後れてしていた私は、おお!その手があった!!と一挙に元気になりました。
 実際、このコースのお題だった数理感染モデリングだけではなくて、ディスカッションのまとめ方、とか、プレゼンテーションの仕方、とか、いわば仕事術的な部分でもずいぶん勉強になりました。
 というわけで、そう、この10日間は、大人の夏休み、改め、マイクロ・サバティカルだったのだ!と、すっきり。そう考えて、7年目の今年は、着任6年間に学んだことをかっちりまとめて、また新しいことを吸収するのに使う一年にしようかな、なんて思い始めています。