2017年1月20日金曜日

先週の続き tricky PCR

 先週からの、トリッキーなPCRバナシの続き。
 PCR1は、大概何をやってもうまくいくのが、PCR2の方は、まず、反応サイクルが、論文通りの古典的な94→55→72℃ではうまくいかず、94→70℃のシャトルPCRもうまくいかず、結局、アニーリング温度を最初高めに設定して、だんだん落としていくというtouchdown方でやっと産物が出てきました。
 ばんざい!と、その方法で増幅していたのが、さて、半分まできたところで、また詰まった。
 今度は、テンプレートの濃度の微妙な差がいけなかったらしく。ヘテロシグマは、変な多糖だか糖脂質だかを多く含んでいるらしいのですが、例えばRNAをとってきてもDNAをとってきても、これらが最後まで混入することが多いようです。去年のゲノム支援でのRNAseqは、このせいで多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
 というわけで、希釈率が高すぎると、target DNAが少なすぎてかからず、しかし希釈率が低すぎると、残留成分が邪魔してかからず、という・・・。

 ああ、気難しい反応だ、さて、残りの4分の一を・・・・と思いきや、またかからない!

 実は、今年早々に、新しく購入した96wellのサーマルサイクラーがやってきたのです。使ってみると、温度の移行が前のサーマルサイクラーよりもかなり早い。すごいなあ!で、これで、PCR1の方はいくつかの反応をしてみて、当然ながら(?)うまくいく。
 というわけで、PCR2 をかけてみると、非常に産物が少ない・・・・。この中には、先ほどの希釈率設定の時にうまくいったサンプルもあるのに、前回増幅されたサンプルが、今回は増幅されなかったわけです。

 なんでなんでなんで??な、わけですが、あれ、これはひょっとして、新しいサーマルサイクラーを使ったせい??
 
 ぱらぱらとマニュアルを見ていると、PCR最適化方のコツ、というところに、場合によっては、温度移行をわざと遅く設定すると、増幅がかかりやすくなることがある、とのこと。特に、このサーマルサイクラーは、温度移行が他の機種より早いのが売りなのだそうです(値段と、他の大雑把なスペックしかチェックしていなかった・・・)。
 あたらしいサーマルサイクラーで苦労して設定するよりは、と、もう一度古い方を使ってみたところ、見事、すべてのサンプルが増幅されました。
 古い方のサーマルサイクラーは、ここに着任して購入した二つ目の備品。32, 48, 96wellといういくつかのタイプがあったのを、お財布と相談して購入した48well用最廉価版。これまで大変お世話になりつつも、一遍に96シークエンス反応を仕掛けたいような仕事が多くなると、古い方はあまり使わなくなるかも...などとチラリと思っていたのですが。今までうまくいったことを、新しい機械で再現するのには、実は結構手間がかかるのかも。古い方の機械にも、これからも大いにお世話になりそうです。

 この反応、とある論文を読んで採用したのですが、かれらは、古典的な3温度のPCR でうまくいっていたわけで。PCRなんて、今までに数百回はかけてきて、確かにサイクルのデザインの違いだの、希釈率だのがきいてくる、というのは経験したことがあったのですが、同じサイクルが機械の違いでこんなにちがうのを実感するのは、初めて。良い経験になりました。

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