お昼ご飯を食べながら、ふらふらとネット上をさまよっていてこんなものを見つけました。
Algal virus found in humans, slows brain activity
クロレラに感染するATCV-1というウイルスがいるのですが、なぜかこのクロレラとウイルスが、人体から見つかることが知られていたのだそうです。例えば法医学的なサンプルなどから見つかる場合は、当然、死亡後に侵入したものを見ている可能性もあると考えられてきたのですが、最近、健康な人間からも見つかることがわかりました。ボルチモアで行われた研究では、92人の被験者のうち43%が保有していたとのこと(咽喉部からのサンプル)。ここまではよいのですが、ウイルスを保有している被験者群は、視覚情報の認知能力をテストすると、保有していない被験者群のスコアに比べて10%程度スコアが低かったとのことなのです。
ここまでだと、本当にATCV-1が認知能力と直接関係しているかは?なわけですが、ここでマウスを用いた実験の結果が。ウイルス感染していないクロレラと、ATCV-1感染させたクロレラをマウスに経口投与して、迷路を用いたテストをしたところ、感染クロレラを投与されたマウスは、非感染クロレラを投与されたマウスよりも、迷路を脱出するのに10%程度時間がかかり、しかも、新しい物体を与えられたときに、その物体に興味を示す時間(長いほど注意力が高いとされているようです)が20%程度短くなったとのこと。
これらの活動は、マウスの海馬が司るとされていますが、海馬における遺伝子発現パターンを比較したところATCV-1の有無で1300程度の遺伝子発現が変動しており、その中には、神経伝達物質とレセプター遺伝子の変動に加えて、免疫関連遺伝子が変動していたとのこと。この研究を行った人たちは、マウスの脳内にウイルスを検出はしなかったのですが、マウス体内に侵入していたATCV-1が、免疫系により認識され、その結果、認知に関係する遺伝子発現を変動させたのかもしれない、と考えているとのことです。
とはいえ、例えば、先ほどの人の被験者でATCV-1のキャリアーとわかった人の血中にはATCV-1と反応する抗体は検出されなかったとのこと。しかしながら、例えば非常に低レベルで感染を維持しているということも今の所否定できないとのこと。
もしもこのウイルスがヒトの認知能力に影響を与えていたとしても、その影響は大きなものではない、と、この論文を発表したグループは述べているそうです。でも、自分のアタマの回転が10%遅くなるならば、できればかかりたくないなぁ……。
最近のメタゲノム解析技術の進歩のおかげで、このような『いるとは誰も予想しなかった』細菌・ウイルス・その他諸々が、え?と思うようなところから検出された、という話をよく聞くようになりました。いわゆる菌叢解析によって、たとえば自閉症と腸内細菌叢パターンに強い相関が見られることがわかったり。これぞ技術の進歩によって拓かれた新研究分野なわけですが、この論文については、個人的に、どきり。
というのも、私たちが興味を持っているウイルス、じつはこの、ATCV-1とかなり近い種類なんです。
実験・培養維持にも廃棄にも、所定の手順を経て気をつけているつもりなのですが、今まで、『藻類のウイルスだから』と安心しきっていたところにこういう話を聞くと、ひえ、と思いました。
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