今週は、20・21日に神戸で開催された『ゲノム支援拡大班会議』に出席して参りました。
『ゲノム支援』というのは、正式には『ゲノム科学の総合的推進に向けた大規模ゲノム情報生産・高度情報解析支援』という名称で、文部省が行っている3つの研究支援事業の一つ。
遺伝子配列の解読は、いわゆる『次世代シーケンス技術』の普及により、驚くほど簡単になってきました。以前であれば、数カ国が参加して、国家予算で計画するレベルの研究費と10年以上の年月をかけて、やっとのことで解読できたものを、今であれば、その機器(一台数千万円から数億しますが)と、その利用に精通している研究者が数人いれば、理論的には数ヶ月以内に予算規模もせいぜい数百万円で解読できてしまう(とてもおおざっぱに云えば、ですが)。
当然ながら、この技術を取り入れて研究を計画したい研究者はたくさんいます。とはいえ、特に地方大学にいる研究者は、このシーケンスを行う機器を持っていない人がほとんどです。そして、その技術を身につけた研究者も未だ少数。せいぜい数百万円の消耗品・人件費だって、日本の生物学基礎研究の予算規模…一般的といわれる基盤研究(C)で、年に百数十万円程度…を考えたら、大学に在籍する研究者には、なかなか出せない。
というわけで、文部省の肝煎りで、ゲノム支援の名の下に研究支援拠点が発足、1年間に100課題程度の研究課題を選択し、この次世代シーケンス解析…実際にDNA/RNAからライブラリを作成し、配列を読む解読の段階から、ツールを用いた情報解析まで…その道のプロが支援してくださるという、本当にありがたい研究支援事業が行われている訳です。
以前、焦って葉緑体を取っていたのは、この支援を受けるためだったのでした。
と、前置きが長くなりましたが、この研究支援をこれまでに受けた人・これから受ける人たちを集めて、情報交換と交流を図りましょう、というのが、この『拡大班会議』というわけです。これまでに支援を受けた人は、3分間のトークとポスター発表、これから受ける人はポスター発表で、全200課題以上。それぞれの研究者が、共同研究者と一緒に出席することができるので、数百名が一堂に会する機会だったわけです。
一口に『ゲノム支援』といっても、ゲノム情報を必要とするのは、医学も含む生物学全般。発表内容は、病原性微生物からヒト遺伝多型からほうれん草からアリから……生きとし生けるものすべてを含んでいます、という感じ。
3分ずつのトークって、短すぎない?と思っていたのですが、かいつまんでいろんなお話を伺えるというのは、とてもよかったです。ここまで発表内容が多岐にわたると、あまり詳しく話していただいても、こちらがついていけませんね。
結局、20日午後1時から始まって、その日の終了は夜10時過ぎ、21日も朝9時から昼の1時までと、なかなかハードなスケジュール。途中、交流会では、私たちの課題を担当してくださる先生方にご挨拶の後、いろいろなお話を聞かせていただき、とても有意義でした。
私たちが扱っている材料が珍しすぎることからか、ポスター発表は、それほど多くの方に見に来ていただいた訳でもなかったのですが、その分突っ込んだお話ができて、楽しかったです。こういうときに、自分のたてた研究計画に『それは面白いですね!』というようなコメントを頂けると、とってもうれしいですし、心強いものですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿