突然ですが、唯今、私たちは、いくつかの海洋バクテリアを、生き残り無く完全に破砕したものを実験に使おうとしています。
溶液中に縣濁した細胞を、皆殺し(失礼)にして、その中に入っている様々な有機物をある実験に供したい。このときに、細胞は全く生き残ってほしくない。
至極簡単……なハズ。
ところが、いろいろやってみたのですが、どうも、不死身な(?!)バクテリアで、なかなか死滅してくれません……。
まず、凍結融解x5回を試してみましたが、結構な数のバクテリアが生き残る。
それでは、と、超音波破砕機に複数回かけてみたのですが、これも生き残り多数。
バクテリアは、UVで殺菌されるわけで、では、と、無菌操作をするためのクリーンベンチのUV灯直下にシャーレに流し込んで(ふたなしで)おいてやって、UVを至近距離で照射しましたが、15分経っても生き残り多数。……余談ですが、これ、結構ショックですよね。UV殺菌灯にこれほど耐えるものなのですよ、ある種のバクテリアは。みなさん、クリーンベンチを使う際には、手はきれいに洗って、アルコールで消毒してからにしましょう。
ゆでたら?という意見もあったのですが、加熱で変成するものが多すぎて、意味が無いかも……ということに。
というわけで、最後の手段、フレンチプレスを使うことにしました。これ、その昔フレンチ博士がある会社と手を組んで発明したのでフレンチプレスと呼ぶのだそうです。
金属製の小さな容器の中に空気を抜いた状態でサンプルをつめ、高い圧力をかけて、そこから狭い間隙を通して噴出させる(外は1気圧)ことで、圧力差を利用した剪断力で、細胞を壊すというモノ。よく、大腸菌でタンパク質を大量発現して、精製するときの大腸菌の破砕に使います。細胞壁を持っている細胞一般に使う方法ですし、大腸菌につかえるのならば、海洋バクテリアにも使えそう。
ただ、中の容器の構造上、例えば25ミリリットルのサンプルをつめると、つぶれないサンプルが1.5ミリリットルぐらいは出てしまう。というわけで、5回機械をかければ、なんとかなるでしょう、という心づもりで処理開始。
……すごい力仕事になりました……。
金属性の小さな容器は底もふたもない円筒形で、その円筒にぴったりはまる棒状のものをしたから差し込んで底にして、上からも、やはりはめ込み式のふたをして、棒状の部品に機械が圧力をかける、わけなのですが、組み立てるのにも力がいる上に、圧力をかけて処理した容器からふたと棒状の部品を引っこ抜くのに悪戦苦闘。
初めて使う機械だから、と、この機械を使ったことがある別グループの同僚にお願いして使い方を教えてもらったのですが、彼の腕力を持ってしても、結構苦労していたものを、こちらは、Hさん+やはり使い方を覚えたいという隣グループのポスドク(女性)+私がかわりばんこに挑戦すれど、うう、こんなに大変だとは。
しかも、圧力をかけている間の音も、すごい。及び腰でびくびくしながらの実験です。
午前中いっぱいを使って、やっとのことで1サンプル処理。あと2サンプル処理しなければなりませんが、続けては体力的にとても無理!
1日おきに1サンプルずつ処理しようということにしました。非力にはつらい実験です(笑。
それにしても、あれだけ頑張って、5回処理してそれでもバクテリアが生きていたらかなりショックですね。その場合はどうしようか、考えなければならないのですが……。とりあえず、少しだけとってプレートにのばして培養して生き残りをチェックする間、幸運を祈るとしましょう……。
ところで、これ、1970年代に購入した、骨董品的価値がある機械なのですが、仕組みが簡単なこともあって、今でも消耗部品を入れ替えれば問題なく動いてくれます。素晴らしいのですが、多分、今ではもう少し便利なものが出ているのでは……。研究所に1台あれば十分な設備なので、もう少し使いやすい新しい型式のものが欲しいいぃ………。と、筋肉痛の二の腕をまわしつつ思ってしまいます。
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