先週、液体窒素で凍らせたヘテロシグマ、実は、あれはウイルスに感染させたもの。今まで知られている限りでは、藻類のうちでもヘテロシグマにだけ感染するウイルスです。というわけで、今週は、先週の『凍結試料』から、ウイルスを精製。ウイルスというのは、普通、タンパク質でできたウイルスの外殻のなかにウイルスの遺伝子が格納されている形の、粒子状のものです。このウイルス粒子を感染した細胞の中から取っきて精製・濃縮しようとしていたわけです。
まず、先日の凍結試料をかちんかちんに凍らせたまま、すりつぶします。液体窒素を加えて、超低温ですりつぶすと、細胞の構造を効果的に、しかも不必要なダメージを与えることなく粉々にできるのです。
で、粉々になったものを、常温の抽出液の中にぱらぱらと入れて均一になるまで混ぜ合わせます。ここに、細胞の膜構造を効果的に壊すために有機溶媒の一種を加えて、静かに振盪。・・・・・すると、褐色だった溶液が緑色に変わります。ヘテロシグマの葉緑体は褐色をしているのですが、とくに葉緑体の膜構造が崩れると、綺麗な緑色になるんです。というわけで、これはヘテロシグマの細胞内の微小構造までが効果的に壊れたしるしでもあります。
遠心すると、上に有機溶媒が、下に抽出液が。有機溶媒層は不要なものを含んでいるので、これは避けて、下の層の抽出液をとります。で、ここにある試薬を加えて氷の上において、一晩おいてもう一度遠心分離。上澄み液を取り除くと、遠心管の底になにやら残っています。
左から4列が、沈殿から、右側4列が
上澄みからウイルスの遺伝子断片を
抽出したもの。沈殿に圧倒的に多くの
ウイルスが見られます。
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ただ、このテの沈殿(の溶解物)にはウイルスがたくさん入っているけれども、宿主細胞から持ち込まれた他のいろいろなものも入っている、ということになっております。80%ぐらいはウイルス、20%はさまざまな宿主細胞の細胞内小器官とその壊れかけたもの、というかんじ。
というわけで、ウイルス『だけ』を綺麗に取ってくるには、もう一つ別のステップがあります。残念ながら、このステップはうまくいきませんでした。もう一度トライかな。
先週の記述に比べて、ずいぶん短いですが、実はこちらの実験のほうがはるかに時間も手間もかかります。そして、うまくいかない確率も結構高い・・・・。一般的にみんなが使っている生物でないと、ちょっとした実験も条件を決めるのに試行錯誤がいるのです。
というわけで、ゆくゆくは純粋なウイルスだけを集めてくるステップもモノにしたいものです。
ところで。
もともとは、このブログは、私たちの研究グループの活動を紹介して、できれば学生さんや研究員をリクルートできたら、と思って開設いたしました。ところが、実は私たちの研究所の公式ページにこのブログのリンクを張るにはブログ開設の届を大学にしなければならないということが発覚。というわけで、しばらくリンクなしで運営しています。どちらにしろ書く内容には変わりはありませんのでよろしくおねがいします。早くリンクを張れる状態にまで書類が処理されてほしいものです。
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