先週木金と、共同研究者が北海道から訪ねて来てくださいました。
研究内容は、ヘテロシグマの発現遺伝子配列情報の整備を目指したRNAseqリードのアセンブリ。アセンブリして、機能を推測して、、、、をすすめよう、と言うものです。
モデル生物ではないヘテロシグマ、NCBIデータベースを検索しても、ゲノム配列情報はもちろん、発現遺伝子配列を情報もほとんどデポジットされていません。Heterosigma akashiwoと入れて検索すると、出てくるもののかなりの部分は、私たちのグループが読んだ配列です。
いえ、『でした』。
ヘテロシグマ発現遺伝子配列を可能な限り網羅的に得て、とりあえずは自分たちの手元に私設データベースを作りたい。で、それができたら、すでに発表されている他の種の発現遺伝子配列と比較解析したりして、論文にまとめたいですね。と言うつもりでの共同研究です。
共同研究者のSさんにアセンブリをお願いして、私はその間に、比較解析をする為の別の種のゲノム配列や発現遺伝子配列をなるべくたくさん取ってこよう、と思い、とあるリソースにアクセス。
このリソースは、まだNCBIにデポジットされていない情報を持っており、ここを探せば、キュレーションは多少の粗かったとしても、最大量の情報が手にはいるはず。
まず、このリソースから、その関連プロジェクトで得られた全てのショートリードをアセンブルしたと言う巨大なファイルのダウンロード開始のクリックを1日の最後の仕事として、同僚とSさんと楽しく夕ご飯。
沢山おしゃべりして、お酒もいただいて、楽しく過ごした次の朝。
昨日落としたフォルダーをダブルクリックしたところ、わかってはいたけれど、720個の配列をを入れたFASTAファイルがずらずらと。。。。
ざっとスクロールしてみると、あれれ??Heterosigma akashiwoと言う文字列が目に飛び込んで来ました。ヘテロシグマの名前がついたファイルが複数個ある........‼︎‼︎
えええぇ????そんなの知らなかったよ?!実は、このサイト、前にも尋ねたのですが、今ひとつ使いこなし方がわからず、ヘテロシグマについては重要な情報は入っていないね、と結論して、そのあとあまりチェックしていなかったのですが。
一気に目が覚めました。で、恐る恐る、ここからマトモに遺伝子配列が得られていたならば最終的にはその情報が全てデポジットされるはずのNCBIデータベースを検索。
Heterosigma akashiwoと入れると、700以上の配列が出て来ます。
以前より随分増えている......。血の気が引く思いです。
とはいえ、このうちの確か200近くは、私たちのグループがシークエンスしてデポジットしたもののはず。当然、私以外の方々が解読されたものもある程度の数はデポジットされているし、以前より増えているとはいえ、RNAseqで発現遺伝子解析して、全てデポジットした数とは思えません。
ひとつひとつチェックしてわかったこと。まず、先のリソースに入っていた配列らは、NCBIにはひとつもデポジットされていませんでした。メタデータによるとリードが取得されたのは2014年以前のことですので、多分、やってみたけど役に立たなかった、公表につながるデータは取れなかった、と言うことでしょうか。
つまり、私たちの仕事の新規性は変わらず。めでたし。あ〜〜〜、心臓がばくばくしました......。
と言う一方で。2018年1月、つまりごく最近に、ある人によって、数多くのヘテロシグマ株からの複数のミトコンドリア遺伝子の配列がデポジットされています。その数、200~300、つまり私たちのデポジット数と同じぐら。これらの配列は、論文にはなっておらず、タイトルは「由来地とは一致しないヘテロシグマ遺伝子」と言うようなもの。
......これって、この人も、私が目指していたような、「由来水域とリンクするマーカー」を探そうと、いくつものミトコンドリアが持つ既知遺伝子配列を、沢山の株から決定してみたものの、そう言う傾向がみられなかったので、得られた配列は全てデポジットした、ということでしょうか。ひょっとしたら、時間をかけて少しずつデータを貯めて来たけれども、全く同じ発想&ちがう配列で私たちが論文を発表したので、がっかりしながら全てを公的データベースにあげたのかも。
『がっかりしながら』、は全くの想像なのですが、自分がその立場になったら悲しい....とちょっと呆然。
本当にその朝まで、ヘテロシグマの研究をしている限り、しばらくはコンピートはしないよね♪と呑気に構えていたのですが、冷汗を書きました。
この話をSさんにしたところ、「いいじゃないですか、そんな風にドキドキできるの。他に同じ研究をしている人がいる、って、いいことですよ」。
そう、確かにその通りです。面白さを共有できるって大切ですし。
実は最近、ヘテロシグマ研究に必要な機器も情報も技術も揃って来た今となっては、研究の進め方について、もう少し前のめりにガツガツしないと嘘だよね、と思うようになっていたのですが。
もう一段ギアを上げる時に来てるんだよね、と、実感させてくれたどっきり2件でした。
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